イラン攻撃半年:自ら「米国不信」をまき散らす

政治・外交

米国とイスラエルが2月末にイラン攻撃を始めてから半年が過ぎた。当初は「4週間程度」とされた戦争は泥沼化の様相を示し、目的に掲げた「核の脅威除去」も先送りされたままだ。ホルムズ海峡を巡る対立が世界経済を揺るがせる一方で、アジアの対中国抑止態勢にも不穏な影が広がっている。

一貫した戦略見えず

トランプ米大統領は攻撃開始翌日の3月1日、「イランがどれだけ強国だろうと、(戦闘は)4週間で終わる」(※1)と豪語し、ヘグセス国防長官は「核保有の脅威を除去するため」の攻撃と説明していた。だが、そのいずれも実現していない。イランが徹底抗戦を掲げ、世界の原油輸出の約2割が通航するホルムズ海峡の事実上の閉鎖に出たため、事態は膠着(こうちゃく)状態に陥った。

米国とイランは6月中旬、軍事行動を終結して「核問題で最終合意を目指す」という内容の「覚書」を取り交わした。しかし、戦闘はその後も続き、交渉は途絶した。国際海峡を私物化するイランの行動が許されないのは言うまでもないが、より大きな問題は、攻撃を仕掛けた米国に一貫した戦略が見えず、行き当たりばったりの対応が目立つことだ。

米イランの覚書交渉では、秋に中間選挙を控えるトランプ氏が、石油価格の高騰を抑えるために海峡封鎖の解除を最優先した。イラン側の要求を「丸のみ」し、核問題も棚上げされたという(※2)。また7月には、米軍による海峡の逆封鎖に関連して「海峡の守護者として貨物の20%相当の対価を徴収する」との方針を示したものの、国際社会から「海賊や強盗に等しい」との酷評を浴びて、翌日撤回した。

戦費16兆円+ミサイルも枯渇?

戦闘の長期化に伴って、戦費もうなぎ上りに増えている。ヘグセス長官は7月、「9月末までに見込まれる作戦費用が375億ドル(約6兆円)に上る」と明らかにした。だが、民間予測によると、実際の直接費用はその3倍にあたる1000億ドル(16兆円)超に達しているとの試算もある(※3)

無視できないのは、戦費だけでなく武器・弾薬の消耗が著しいことだ。戦略国際問題研究所(CSIS)の分析によると、米国のミサイル防衛の主力の一つであるパトリオット用ミサイルの備蓄が攻撃開始前と比べて3分の1に減少し、「最終段階高高度地域防衛(THAAD)」用のミサイルも半減したという(※4)。米軍幹部らは備蓄減少の懸念を大統領にも伝えたとされ、CSISはこれらのミサイルが枯渇すれば、「中国との有事を想定したインド太平洋の米軍抑止力を低下させる恐れがある」と指摘している。

36カ国で「対米不信」が7割以上

「西側の盟主」とされてきた米国への信頼も、急速に失われつつある。トランプ氏は同盟・パートナー諸国との協議や根回しもなしに攻撃に走ったため、イスラエル以外で協力する国は皆無に等しい。7月にトルコで開かれた北大西洋条約機構(NATO)首脳会議も体裁を保っただけに終わり、来年の首脳会議が開かれる見通しすら立っていない。

こうした米欧の亀裂を懸念する中東では8月、サウジアラビア、トルコ、パキスタンがNATOと同様の相互防衛協定(メッカ共同防衛協定)を締結した。3カ国はいずれも安全保障を米国に依存してきたが、米国のコミットメントへの不安とイラン、イスラエルの脅威に対応する独自の動きとみられている。

米調査会社ピュー・リサーチ・センターが6月、トランプ氏の国際的指導力について行った国際世論調査によると、日本を含む計36カ国で「信頼していない」との回答が76%に上った。「信頼する」が過半数に達したのはフィリピン、イスラエルなどわずか6カ国しかなく、イラン攻撃への賛否も36カ国全体で「支持しない」が74%を占めたという(※5)

トランプ政権は8月、通商交渉のもつれから隣国カナダに50%の追加関税を発動し、米加関係を一層険悪化させてしまった。本来、味方にすべき国まで見境なく敵に回してしまう手法が、ますます国際社会を遠ざけている。

日本は何を伝えるべきか

イラン情勢の先が見えない中で、高市早苗首相は9月下旬にもニューヨークの国連総会に出席してトランプ氏と会談する。対中政策のすり合わせが主要アジェンダだが、日本にとって特に懸念されるのは、イラン戦争の長期化で米空母の中東派遣が続き、台湾を含むインド太平洋での米軍の抑止力が損なわれる事態だ。

また、トランプ政権が国際刑事裁判所(ICC)の赤根智子所長を制裁対象に指定した問題も、日本政府は対応に苦慮している。日米同盟は日本にとって外交・安全保障政策の基軸であるため、高市首相は対米批判を封印しているが、米国の措置によって「法の支配」の原則が揺らげば、結果として日本は国益を損なうことになる。

バナー写真:オマーン沖のホルムズ海峡に浮かぶ船舶=2026年8月31日(ロイター=共同)

(※1) ^ CNN日本語版3月2日、「トランプ氏、イランとの紛争の期間示唆 4週間程度」。

(※2) ^ 8月28日読売新聞朝刊、『米、イラン要求「丸のみ」 覚書交渉「わかった」連発 ホルムズ開放優先で』。

(※3) ^Trump’s $100 Billion Iran War Mistake,” By Daryl G. Kimball, Arms Control Association, July/August 2026.

(※4) ^Renewed Iran War Would Test Diminished Interceptor Inventories,” By Mark F. Cancian and Chris H. Park, CSIS, July 27, 2026.

(※5) ^Trump Gets Negative Reviews Internationally in 2026, Fewer Say US Is Reliable Partner,” Pew Research Center, June 23, 2026.

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