外国人在留は「選別しつつ受け入れ」へ:相次ぐ審査の厳格化
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利便性向上と基準・手数料の引き上げ
今、「日本では住み続けにくくなる」と感じている外国人は少なくないだろう。複数の制度の変更が同時に進行しているからだ。
例えば、2025年10月施行の在留資格「経営・管理」の新基準では、資本金や職員数、日本語能力などの要件が厳しくなった。さらに26年3月からは在留資格「技術・人文知識・国際業務(技人国)」について、専門性のない業務への従事を取り締まるため、派遣先を調査することにした。在留期間の更新や永住許可についてもチェックの強化や手数料の値上げが進められている。
「経営・管理」在留要件
| 項目 | 改正前 | 改正後 |
|---|---|---|
| 資本金 | 500万円以上 | 3000万円以上 |
| 経歴・学歴 | なし | 経営・管理経験3年以上または経営などに関する修士・博士・専門職の学位 |
| 雇用義務 | なし(資本金の代替に2人以上) | 1人以上の常勤職員 |
| 日本語能力 | なし | 申請者か常勤職員に相当の日本語力(B2以上) |
| 専門家の確認 | なし | 新規事業計画について専門家の確認 |
※2025年10月16日新基準施行。「経営・管理」更新は28年10月16日まで経過措置
ただ、政府は2026年1月23日に一連の厳格化の基本方針ともいえる「外国人の受入れ・秩序ある共生のための総合的対応策」を決定したが、同日には技能実習に代わって27年4月に導入する育成就労制度と特定技能制度の運用方針も決定した。
育成就労は、条件を満たせば本人の希望によって同じ業務分野内で勤務先を変更できるようになる。特定技能の資格者は1号から2号へ移行すれば、在留期間の更新回数に上限がなくなり、家族の帯同も認められ、永住要件の在留期間にも算入される。外国人労働者にとって利便性が高い制度だ。
つまり政府は、労働力としての外国人を必要とする分野では受け入れの仕組みを維持・整備する一方、入国後の確認事項を増やし、水準を引き上げて厳格化・選別するという2つの方向を同時に進めているのだ。
「国民の不安や不公平感に対処」
ルールの厳格化の目的のひとつに国民感情への対応がある。政府は2026年1月に決定した「総合的対応策」に、一部の外国人による法やルールからの逸脱や制度の不適正利用があり、「国民が感じている不安や不公平感に対処する必要」と明記した。そのうえで、出入国・在留管理だけでなく、社会保障、医療、教育、土地取得など幅広い分野で、実態把握や情報共有、制度の適正化を進める方針を示したのだ。
政府の新たな外国人受け入れ政策のポイント
秩序(規制強化)
- 「不法滞在者ゼロプラン」を強力に推進
- 在留資格や帰化の審査厳格化を検討
- 外国免許切り替えの厳格な運用
共生(社会統合)
- 日本語や社会規範を学ぶプログラムの検討
- 就学前の子供向け初期支援「プレスクール」を検討
- 日本語教師の養成・研修、社会的地位の向上
例えば、法務省は26年6月改定のガイドラインでは、納税など公的義務の履行について関係機関から得た情報を在留に関する資格の変更や期間の更新の許否判断に用いる場合があるとした。これまで本人提出資料が中心だった確認情報を、行政機関が持つ情報と連結させ得ることをより明確に示したことになる。
生活状況のチェックを審査にひもづけ
変化がはっきり表れたのが、永住許可申請だろう。職種にも在留期間にも制限がない在留許可は、日本で最も安定した在留資格であり、これまでも個々の事情を踏まえて審査されてきた。従来のガイドラインは比較的簡潔で、一定期間の在留や善良な素行、独立した生計、公的義務の履行といった大枠の要件は示されていたが、個々の事情をどう評価するのかは明らかにされていなかった。そのため、「どの程度の収入なら許可されるのか」といった情報は、専門家の解説や申請したことがある経験者の実体験を通じ共有されてきた。
2026年8月に出入国在留管理庁が公表した新ガイドライン案は、永住許可の審査の際に考慮する事項を従来より具体的に示した。収入や将来の年金、日本語能力、日本の制度やルールへの理解など、日本での生活実態をより幅広く確認する内容だ。入管庁は、審査で考慮すべき事項について基本的な考え方を示すことで、永住許可の可否の「予見可能性を高める」と説明している。
永住許可の審査厳格化のポイント(27年4月)
- 日本人世帯の平均収入を上回る水準の安定した年収(26年10月先行)
- 30年間の厚生年金加入と同水準の受給見込み(不足分は資産で充当可能)
- 日常的な場面で自立して対応できる日本語能力「B1相当」を求める
- 日本の制度・ルールの理解
- 子の就学審査
- 税・年金の納付状況調査(従来から)
- 配偶者要件「結婚後3年経過・在留1年」→「結婚後5年以上・在留3年以上」
つまり、政府は在留する外国人に対し、収入や日本語能力などはより高い水準を求める一方で、内容を具体的に示して審査項目を分かりやすくした。ただ、個々の事情を総合的に考慮して判断するという従来の基本的な仕組みは変わらず、審査に関わる基準や判断のプロセスまで見えやすくなるわけではない。
平口洋法相(当時)は、8月4日の記者会見で「独立生計要件や国益要件の運用について、公共の負担とならないことをより確実に担保するという観点から必要な見直しを行った」と述べた。
手数料増 「受益者負担」を強調
手数料負担も重くなる。2026年5月改正の入管法に基づき、政府は10月1日の申請から在留資格の変更・更新と永住許可の手数料を改定。全ての在留期間が6000円だった変更・更新の手数料は、許可する在留期間に応じた段階制となり、5年なら7万5000円、永住は1万円から20万円に引き上げる。オンライン申請や生活困窮と人道上の配慮の両方に該当する場合には減額の仕組みが設けられた。
在留許可の手数料(窓口)
| 改定前 | 改定後(期間・料金) |
|---|---|
| 変更・更新 6000円 | 3カ月以下・1万円 |
| 3カ月超~6カ月以下・1万8000円 | |
| 6カ月超~1年未満・2万5000円 | |
| 1年・3万3000円 | |
| 1年超~3年未満・4万8000円 | |
| 3年以上~5年未満・6万4000円 | |
| 5年以上・7万5000円 | |
| 永住 1万円 | 20万円 |
平口法相(当時)は7月3日の記者会見で、在留外国人数の伸びなどにより出入国・在留管理の費用の増大が見込まれるため「在留外国人にも相応の負担を求めることが必要だ」と述べ、審査の実費に加え管理費用も勘案して手数料を引き上げることにしたと説明。受益者負担の観点を強調したものと受け止められた。
永住権申請料、米国並みに
外国人の永住については、諸外国でも在留年数や収入や言語能力などを条件とする国は多い。英国では、5年間暮らしたうえで、収入や英語力の条件を満たし、制度や歴史についての試験に合格する必要がある。現在は在留年数を延ばし、英語の要件も引き上げる方向で見直しが進む。ドイツも、原則5年の在留に加え、安定収入、60カ月分の年金保険料の納付、B1レベルのドイツ語と法制度の基礎知識を求める。韓国も、原則5年の在留に加え、1人当たり国民総所得を基準とした収入と、社会統合プログラムの修了か試験合格を求める。
手数料も異なる。ドイツと韓国は日本円で約2万円、米国で国内在留者を永住資格に切り替える申請料は約21万~22万円、英国は60万円台だ。これまで日本は1万円で、この4カ国のいずれよりも安かった。しかし、2026年10月からは20万円となり、ドイツと韓国を大幅に上回り、米国とほぼ同じ水準になるが、英国よりは低い状態になる。
ただし、永住資格を取得するための要件や手数料に含まれる審査範囲は国ごとに異なり、単純比較で適切かどうかを判断することはできない。
外国人政策の全体像見渡す視点を
これらの動きから見えてくる大きな方向は比較的明確である。日本は外国人の受け入れそのものを止めようとしているわけではない。人手不足を背景に、外国人労働者を受け入れる制度の整備は今後も続くだろう。
一方、日本に入った後の就労や生活、在留期間、さらに長期的な定住を認める際には、これまで以上に多くの事項を確認し、求める水準を引き上げる方向だ。同時に、在留を続けるために必要な費用も増える。
所管も根拠も異なる別々の政策だが、個々の外国人の生活実感としては、仕事、在留資格更新、税や社会保険、永住の手続きなどの各場面で連続した負担増に映るはずだ。
全体像を俯瞰(ふかん)して、外国人を取り巻く制度の変化を理解することも重要だ。
※2026年9月1日時点の公表情報に基づく。検討段階の内容も含むため、実際に在留資格の手続きは、出入国在留管理庁などの関係サイトで最新情報を確認する必要がある。
引用元
- 日本:出入国在留管理庁「令和8年10月1日付け在留許可手数料の額の改定等について」「同Q&A」
- ドイツ:連邦司法省・連邦司法局「滞在法第2条第11項」「同第9条第2項」「滞在令第44条第3号」
- 韓国:国家法令情報センター「出入国管理法施行規則」「同第18条の4第1項」「同第72条第5号」、法制処 「Permanent Residency」「永住権取得」
- 米国市民権・移民局(USCIS)「Form G-1055, Fee Schedule, Edition 09/09/26, p. 15, Form I-485.」
- イギリス:内務省「英国査証・移民局」 「Home Office immigration and nationality fees, 8 April 2026 Section 9」「Indefinite leave to remain – main applicant and dependants」
バナー写真:東京出入国在留管理局(PIXTA)
