高市内閣を支える「防火壁」の存在
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前回の本コラムで、高市早苗首相による内閣改造を論じた際、「首相の説明とは必ずしも一致しない人選」として挙げたのが、簗和生(やな・かずお)前農水相だった。
首相は新閣僚の登用に当たり、「選挙での強さ」を重視したと説明していた。だが、簗氏は自民党が歴史的大勝を収めた今年2月の衆院選小選挙区で落選し、比例復活していた。その「基準」にそぐわないまま初入閣を果たした簗氏は、1カ月もたたずに辞任に追い込まれた。
自らを支援しなかった首長の自治体の道路予算を「カットした」との発言など、一連の問題は既に多くの報道で指摘されており、ここでは詳述しない。ただ、高市政権の発足以来、首相の説明や閣僚の資質にこれほど批判が集中したのは初めてだっただけに、内閣支持率への影響が注目された。国会の代表質問で問題が取り上げられると、その後の世論調査が更迭の判断を左右するとの解説が相次いだ。ところが、多くの調査では支持率の下落は小幅にとどまっている。
簗氏の辞任前に実施されたNHKの調査では、支持率は前月比2ポイント減の51%。時事通信も1.7ポイント減の42.4%にとどまった。辞任後の調査でも、共同通信、読売新聞、朝日新聞、JX通信社・選挙ドットコムでは下落幅が1〜4ポイント程度に収まった。一方、FNN・産経新聞は1ポイント増の62.6%、ANNは11.2ポイント減の47.1%とやや特異な結果を示した。各種調査の結果を見る限り、簗氏の問題により、内閣支持率が大きく崩れたとは言い難い。
では、なぜこれほど注目された問題が、内閣支持率の大幅な下落につながらなかったのか。
JX通信社と選挙ドットコムの合同調査で、一連の問題が内閣の支持・不支持にどの程度影響したかを聞くと、「全く影響していない」「あまり影響していない」が計55%を占めた。ただし、支持者の態度を読み解くには、回答の内訳を見る必要がある。
影響しなかった理由として最も多かったのは、「簗氏個人の問題であり、内閣全体や高市首相の問題ではないと思うから」の16.8%。次いで「内閣の評価は、大臣の問題よりも政策や実績で評価すべきだから」が13.7%だった。内閣を強く支持する層ほど、こうした回答が多い。
こうした強い支持層には、簗氏への評価と首相や内閣への評価を切り離し、閣僚の問題より政策への期待を重視する傾向がうかがえる。前回のコラムでは、首相1人が内閣の「顔」であると指摘した。今回はむしろ、その構造が「首相と簗氏は別」ととらえて、首相の評価を下げない「防火壁」になっていたのではないか。
もちろん、閣僚を任命した首相の責任がなくなるわけではない。しかし、その責任を問うことと、内閣への支持を取り下げることは、有権者にとって必ずしも同じではない。ここに、高市首相の支持基盤の強さが見える。
同じJX通信社・選挙ドットコムの定例調査(電話)によれば、高市内閣を「強く支持する」層は発足当初の4割超から縮小したものの、最近は2割台半ばで推移している。ちなみに、内閣を「強く支持する」層のボリュームは、石破茂内閣の発足時は1割程度だった。また、調査方式が変わっているため単純比較はできないが、安倍晋三政権末期は15%前後、岸田文雄政権では5%程度に落ち込むこともあった。これらの事例と比べても「強く支持する」コアな支持層の厚さは、今なお高市内閣の支持構造における重要な特徴だといえよう。
そのコアな支持層が、支持理由として最も多く挙げるのは「政策に期待が持てるから」である。経済政策や保守色の強い政策に期待を寄せるコアな支持層が、高い支持率を支える土台となっているわけだ。
つまり、コアな支持層の期待がある程度保たれる限りにおいては、高市内閣は高めの支持率を維持できる可能性がある。誰が首相であれ、政権運営に問題はつきものだ。政権への批判は、今後も様々なタイミングで巻き起こるだろうが、その影響度は「コアな支持層の期待や支持の動機にどこまで作用するか」で測る必要がありそうだ。
バナー写真:参院予算委員会に臨む高市早苗首相(中央) 2026年10月16日、国会内(時事)