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湯葉(ゆば):“大豆と水だけ” 究極のシンプルでリッチ― 修行僧の健康を支えた寺町の伝統食材

文化 暮らし

「畑のお肉」とも呼ばれる大豆をすりつぶして作る豆乳をゆっくりじっくりと温めて、絹のような薄い膜を丁寧にすくいあげる。はかなく、美しく、それでいて濃厚な味わい。

大豆の栄養が凝縮

煮た大豆をすりつぶしてこすと、豆乳と搾りかす(おから)に分かれる。豆乳を加熱し、にがりなどで凝固させたものが豆腐、表面に張った膜をすくい取ったものが湯葉である。何も加えることなく、大豆のたんぱく質と脂質が熱によって凝固したものなので、雑味なく、コク深い味わい。

すくい取ったままの状態を「生湯葉」、冷蔵技術がなかった時代に乾燥させて保存性を高めるためにあみだされたものを「干し湯葉」と呼ぶ。

さまざまな形状の乾燥湯葉(PIXTA)
さまざまな形状の乾燥湯葉(PIXTA)

名前の由来は2つある。すくいあげた膜にシワが寄った状態が、姥(うば=老婆のこと)のシワに似ていることから「うば」からが転じたというもの。もうひとつは、上澄みをすくうことから「うわ / うは」が「ゆば」に変化したとするもの。漢字では「湯葉」が一般的だが、「湯波」とする地域もある。

古くは寺で作られていた

湯葉の歴史は古く、仏教とともに日本に伝来したとされるが、年代は定かではない。有力な説の一つに、遣唐使として唐に渡った仏僧・最澄が持ち帰ったというものがある。最澄が開祖となった比叡山延暦寺(滋賀県)のふもとには「山の坊さん何食うて暮らす 湯葉の付け焼き…」というわらべ歌が伝わっている。

僧侶の食事は仏教の教えに従い、肉や魚を使わない精進料理だ。湯葉は、同じ豆乳からできる豆腐やおからと比べても高たんぱく・高脂質で、大豆のミネラルやビタミンも含まれるため、大事な栄養源だった。

鎌倉時代、湯葉は京都の禅宗の寺で盛んに作られ、後に日光(栃木県)や身延(山梨県)など、寺院に多い土地に広まった。

乾燥巻き湯葉の煮物(写真提供:日光市)
乾燥巻き湯葉の煮物(写真提供:日光市)

近年では、大豆の栄養分を凝縮した健康食材として、国内だけでなく海外からも注目されるようになった。動物由来の食材を食べないビーガンにとっても安心して食べることができるので、さらなる可能性も秘めている。

自家製も楽しい!湯葉を使った料理いろいろをこちらにまとめました
→「生はトロ~リ食感が絶品!いつでも使える乾物も重宝 湯葉のお料理コレクション

取材・構成:イークラフト

バナー写真:時事

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