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梅干し:酸っぱい・しょっぱい・元気が出る―日本人のソウル・サプリメント

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ハチミツ漬けやかつお風味など食べやすく加工したものも増えているが、梅干しは塩味・酸味がガツンと効いてこそ価値がある!

梅干しは、塩漬けにした梅の実を干した漬物。酸味・塩味が強いので、ご飯のお供にしたり、味のアクセントとして料理に使ったりすることが多い。

小田原市の梅林(写真提供:神奈川県観光協会)
小田原市の梅林(写真提供:神奈川県観光協会)

植物としてのウメは中国原産で、バラ科に属するサクラやスモモの仲間。日本への伝来は飛鳥・奈良時代に遣唐使が、中国で薬用とされていた梅の実のくん製「烏梅(うばい)」を持ち帰ったのが最初といわれる。最古の歌集『万葉集』に、その花を愛でる和歌が120首近くもあるほど、梅は古来親しまれてきた。果実の生産は、和歌山県が全国の6割と圧倒的なシェアを誇る。大粒で果肉が厚く皮が薄い、南高梅(なんこううめ)が有名。

梅の花と梅の実(いずれもPIXTA)
梅の花と梅の実(いずれもPIXTA)

その実を加工して食べるようになったのは平安時代。薬効高く滋養のある食べ物として、文献に登場する。戦国時代は、梅干しが疲労回復や毒消しに役立つと重宝され、戦場の携行食として普及。鎌倉時代には武士の食膳に上り、江戸時代になると庶民の間にも広まった。梅の加工品は中国や韓国にもあるが、梅干しは日本独自のものだ。

梅干しは腐らない?

初春に開花した梅は5月に実をつけ、6月に最盛期を迎える。ちなみに、雨続きのこの時期を「梅雨 = つゆ / ばいう」と呼ぶのは“梅が熟す頃の雨”の意味合いから。旬の走りには小梅が出回り、その後に青梅、黄みがかった梅が店頭に並ぶ。

梅干しの作り方はシンプルで、梅を1カ月ほど塩漬けにし、梅雨が明けたら3~4日ほど天日干しにする。塩の量は好みだが、昔ながらの漬け方は塩分濃度が20%前後と高く、常温で長期保存が可能。「梅干しは腐らない」といわれるのはそのためだ。

漬けた梅と赤シソを天日干しする(PIXTA)
漬けた梅と赤シソを天日干しする(PIXTA)

何年も保存できるのは、塩だけで漬けた“白干し”もしくは色と風味付けのため赤シソを加えた“シソ漬け”のみ。食品表示法で「梅干し」と名乗れるのも、伝統的なレシピで作られた品に限られる。

塩分を気にする人向けの減塩タイプ、削り節を加えたカツオ梅や、まろやかな甘みのハチミツ梅、堅い歯ごたえが人気のカリカリ梅など、市販品のほとんどは「調味梅干し」に分類される。

食の欧米化などにより梅干しの国内需要は減少しているが、和食ブームや健康食としての評価から、梅の輸出量は伸びつつある。梅干しを想像するだけで口の中に唾液があふれるのは、日本人の舌がその味を覚えているから。海外の人も見ただけで口をすぼめるほど、いずれ世界中に広まったなら面白い。

梅干しの使い方、人気の料理をまとめました

→「一粒の酸っぱさでシャキッと整う:梅干しのお料理コレクション

【資料】

取材・構成:イー・クラフト

バナー写真:PIXTA

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