「最強レベル」W杯日本代表、注目度に課題:サッカー「ライト層」の離反防ぐには
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強豪を次々倒し 世界ランキング18位
8大会連続8回目の出場となる日本。W杯に先立ち、3月31日(日本時間4月1日)、世界ランキング4位のイングランドと親善試合で対戦。同19位の日本が、4度目の対戦で初の白星を挙げた。
前半に三笘が決めた1点を最後まで守り抜き、1-0で逃げ切った。約8万人の観客が詰めかけたサッカーの聖地、ロンドンのウェンブリー・スタジアムで挙げた日本代表の歴史的勝利だった。国際サッカー連盟(FIFA)は4月1日、日本の順位をひとつ上げて18位と発表した。

国際親善試合イングランド戦。後半、ドリブルでボールを運ぶ上田綺世(右)=2026年3月31日、イギリス・ロンドン(時事)
試合後の記者会見で、森保一監督は「ここウェンブリーで勝つことは難しいと想定していた。予想通り、イングランドから圧力を受ける場面も多かったが、それも想定して選手たちが我慢強く戦い、決定機をものにすることを集中力を切らさずにできた」と振り返った。
イングランドは主将のFWハリー・ケイン(バイエルン・ミュンヘン)ら主力数人が欠場し、ベストメンバーではなかったが、それでもアウェーでイングランドに勝つという事実は日本代表に自信をもたらした。
昨年10月に東京・味の素スタジアムで行われたブラジルとの対戦でも、日本代表は後半の3ゴールで3-2と逆転勝ちし、W杯優勝5回を誇るサッカー王国から14度目の対戦で初勝利を挙げている。親善試合とはいえ、W杯本番に向けて、手応えを感じさせる戦いだった。

国際親善試合ブラジル戦で勝利し、喜ぶ久保建英(右端)ら日本代表=2025年10月14日、東京・味の素スタジアム(時事)
「優勝を目指す」と公言する森保監督
W杯を1年後に控えた昨年6月、森保監督は日本サッカー協会(JFA)を通じて次のような声明を発表した。
「2005年に発表した『JFA 2005年宣言』の中で、2050年までにSAMURAI BLUE(日本代表)がワールドカップで優勝するという目標を掲げた。過去最高成績がベスト16であると考えると、26年のワールドカップではベスト8進出が現実的な目標になると思うが、そこだけを目指していても成長は望めない」

国際親善試合ブラジル戦。前半、試合を見詰める森保一監督(左)。右はブラジルのビニシウス=2025年10月14日、東京・味の素スタジアム(時事)
16強に進出した2018年のW杯ロシア大会では、日本に勝ったベルギーが3位。22年のカタール大会では、PK戦で日本を退けたクロアチアが3位に入った。「日本ももう一つ壁を乗り越えれば決勝まで勝ち進むことができる、優勝できると私自身が強く実感したし、何より試合後の選手たちの悔しそうな表情からは、やり切ったけれども力が及ばなかったのではなく、勝てる力があったのに負けてしまった、という無念さを感じた」。森保監督は過去2大会をそう振り返り、「W杯優勝、世界一を目標に掲げている」と公言した。
代表26人中、23人は欧州クラブ所属
今回のW杯メンバーを見ると、26人中、23人は欧州各国のクラブに所属する「海外組」だ。Jリーグでプレーする「国内組」はGKの早川友基(鹿島)、大迫敬介(広島)と、イタリアなど海外経験を積んで日本に戻ってきたベテランDF長友佑都(FC東京)だけだ。
日本がW杯初出場を決めた1998年のフランス大会当時、海外でプレーする日本代表選手はおらず、全員がJリーグのクラブ所属だった。その後、イタリア・セリエAのペルージャに移籍した中田英寿を筆頭に欧州のリーグに移籍する選手は増加の一途をたどり、今では男女合わせて100人以上の日本人選手が欧州各国でプレーしている。

W杯フランス大会でジャマイカ戦に臨んだ日本代表イレブン=1998年6月26日、フランス・リヨン(時事)
欧州のリーグでは、南米やアフリカ、アジアの選手も数多くプレーしており、グローバルな環境で世界トップレベルの争いが日常的に繰り広げられている。こうした中で選手たちは海外勢としのぎを削り、「個の力」を上げてきた。さらに日本が持ち味とする組織連携の強さが相乗効果を生んでいる。森保監督の下では、前回W杯のドイツ、スペイン戦での勝利を含め、欧州勢を相手にした90分間の試合では無敗(7勝1引き分け。前回W杯のクロアチア戦はPK戦で敗れたため、引き分け扱い)を継続中だ。
今回、三笘が抜けた穴は大きいが、選ばれたメンバーはイングランド、ドイツ、スペイン、イタリア、フランスという「欧州5大リーグ」の他、オランダやベルギー、デンマークといった国の1部リーグでプレーしており、世界のトップと争うのに十分な戦力といえる。
全国に広がり、史上最多動員のJリーグ
一方、国内ではJリーグが1993年の創設以来、30年以上の歴史を積み重ねてきた。発足当初は10クラブだったが、地域密着の理念が各地に浸透し、今では1部から3部まで計60クラブを数えるまでになった。全国的に見ると、Jクラブのない都道府県は、岩手、福井、三重、和歌山、島根の5県だけだ。
日本代表発表の記者会見で、森保監督が「Jリーグの選手は、現在の日本代表には少なくなっているように見えるかもしれないが、Jリーグで経験してきたからこそ世界に挑めるという力を付けさせてもらった」と述べたように、国内で成長した選手が欧州のクラブに移籍する例は、もはや珍しくなくなった。
Jリーグは2017年以降、スポーツ専門の動画配信大手、DAZN(ダゾーン)と長期の放映権契約を結んでおり、現在の契約は23~33年までの11年間。総額2395億円に達する巨額の放映権料は、Jリーグを通じて各クラブに分配され、その財政を支えている。年間総入場者数も昨年は1350万3210人と史上最多を記録し、J1(1部)では1試合平均2万1246人とコロナ禍前の水準を上回った。
「コア層」と「ライト層」分離が顕著
ところが、これに反して国内でのサッカーの注目度は高いとはいえない。広告代理店、電通がこのほど発表した「スポーツ総合調査2025」(15~69歳全国7200サンプル調査)によれば、「競技の興味関心」では野球が36.0%と高く、約10ポイントの差をつけられて男子サッカーは25.8%で2位。さらに「テレビ、新聞、雑誌、ネットなどで情報を見聞きする選手」を問う質問では、上位20人に入ったサッカー選手は6位の三笘、7位の久保建英(レアル・ソシエダ)の2人だけだ。
「興味・関心のある大会やリーグ」でも、サッカーW杯は6位にとどまり、ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)や夏冬の五輪、高校野球、箱根駅伝よりも下位に位置付けられる。Jリーグは20位に低迷し、欧州サッカーは20位以内には見当たらない。
Jリーグは有料ネット配信のDAZNと契約を結んでいるため、地上波で試合が放送される機会はほとんどなくなった。日本代表選手の大半も欧州各国のリーグでプレーしており、メディアに露出する機会は少なくなっている。W杯は今大会から参加チーム数が32から48へと拡大し、アジアの出場枠も増加(従来4.5枠から8.5枠。0.5枠は大陸間プレーオフ)。このため、かつてのような予選の緊張感や興奮も見られなかった。
こうした状況の中で、サッカーにさほど関心のない「ライト層」が選手の活躍に触れる機会は減り、Jリーグの観戦に自ら出向くような熱心な「コア層」との分離が進んでいるようだ。一方、スポーツニュースでは米大リーグの大谷翔平(ドジャース)らが連日取り上げられ、W杯開幕が近づいても、サッカーの報道量は一気には増えない様子だ。
協会も危機感、W杯は地上波も
日本サッカー協会も危機感を抱き、最近は日本代表戦の地上波放送を重視する姿勢を見せている。今年3月には電通と2027年から4年間の日本代表戦の放送・配信に関する契約を結び、有料ネット配信の独占とならないような仕組みを構築した。
ただ、注目度をすぐに上げるのは簡単ではなさそうだ。日本代表が歴史的勝利を挙げたイングランド戦は、NHKのEテレで生中継されたが、世帯視聴率(ビデオリサーチ調べ、関東地区)は2.9%にすぎなかった。時差の関係で日本時間午前3時45分のキックオフだった影響もあるが、事前の報道も少なく、一般の視聴者がその快挙に興奮するようなことはなかった。
今回のW杯の代表発表の記者会見で、森保監督は「日本一丸でより多くの日本人のみなさんが結束して世界に挑み、われわれと一緒に戦ってくださることで勝つ可能性が上がっていくと思う。W杯本大会に向けても日本を巻き込んでいく思いを持って世界に挑むことができれば」と強調した。
5月31日に東京・国立競技場で行われた壮行試合で、世界ランキング75位のアイスランドを相手に日本代表は1-0と苦戦の末に勝利した。三笘だけでなく、ポイントゲッターである南野拓実(モナコ)も負傷で欠き、攻撃面では不安材料も残ったが、それでもスタジアムには6万2212人の観客が詰めかけ、開幕に向けて期待も高まってきた。
今回のW杯は全104試合がDAZNでライブ配信され、NHKのBS4Kでも生と録画で全試合が放送される。地上波では日本代表戦など主要な試合は中継され、NHK総合で34試合、日本テレビで15試合、フジテレビで10試合の放送が予定されている。日本代表が本番で強豪国を退け、サッカーの熱狂や興奮を日本に呼び戻せるか。「SAMURAI BLUE」の戦いに注目したいものだ。
バナー写真:ワールドカップ(W杯)壮行試合・アイスランド戦後の壮行セレモニーで、記念撮影する日本代表イレブン=2026年5月31日、東京・MUFGスタジアム(時事)
