【動画】行司:相撲を支える縁の下の力持ち

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土俵の上で力士たちの取組を裁く行司。その裏には相撲を支えるもう一つの顔がある。インタビュー映像とともに、その仕事を紹介する。

「行司」と聞いてほとんどの人が想像するのは、装束を身に付けて土俵の上に立ち、軍配を手に力士の取り組みを裁く姿だろう。

しかし、そのような表に立つ仕事は、「時間に換算すれば全体の2割に過ぎない」と高田川部屋所属の三役格行司、11代目・式守勘太夫(しきもり・かんだゆう)さんは話す。

「残りの8割は、簡単にまとめると『雑用』、相撲協会や部屋の業務です」

協会の仕事としては、大相撲の取組表や番付表の作成、本場所の場内アナウンス、巡業の準備など多岐にわたり、所属する部屋でも、運営に関わるさまざまな雑務をこなす。若い力士たちの心のケアをするのも大切な役目だ。これらの仕事は「力士と生活を共にしながら、自然と身に付けていく」ものだと言う。

高田川親方、竜電関、輝関とともに食卓を囲む勘太夫さん

行司になった後、3年間は養成期間として、相撲の歴史や決まり手、発声、相撲字の書き方などを学んでいく。序ノ口格行司から始まり、最高位の立行司まで8階級に格付けされる。

2018年9月現在、立行司が空位のため、42人いる行司の頂点に立つのは勘太夫さんだ。1975年5月、木村英樹の名で初土俵を踏んだ。先代の高田川親方である元大関・前の山のファンで相撲界入りを決めたと言う。

「相撲は強かったんですが、力士になるには体が小さかったので」

その後30年間、一つ一つ昇格を重ねて、05年9月、ついに幕内格行司に。12年1月には11代・式守勘太夫を襲名すると、翌年5月には三役格に昇進した。

これまで43年にわたる行司人生で心掛けてきたのは、仕事を任されたらすぐに「はい、わかりました」と答えること。「わからない」や「できない」ではなく、何とかしようと前向きな姿勢で取り組むのだという。その中で、自分が得意なことは何かを考えながら存在感を発揮してきた。

若い頃は「ミキサーにかけられたように、慌ただしい生活を送っていました」と笑う勘太夫さん。常にスポットライトの当たる存在とはいえない行司だが、縁の下の力持ちとして、相撲を守り続けている。

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取材協力=相撲専門ウェブマガジンおすもうさん
写真=花井 智子
動画・文=野口 香織
(バナー写真=結びの一番を裁く勘太夫さん 時事通信フォト)

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