新型肺炎:専門家らがウイルス対策 7つの緊急提言

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医療専門家らが組織する「STOP感染症2020戦略会議」(座長・賀来満夫東北医科薬科大学特任教授)が2月10日、都内で記者会見し、国民に向けた「新型コロナウイルス感染症」対策に関する7つの緊急提言を行った。

感染症対策を意識した“新生活習慣”を

肺炎などを引き起こす今回の新型コロナウイルス感染症については、一部に正しくない情報も飛び交い、国民が混乱する恐れも出てきた。このため、同会議は国民に正しい知識を持ち、感染症対策を意識した“新生活習慣”を身に付けてもらおうと緊急提言をまとめた。 

感染症と向き合うための日常生活の心得として、7つが提示された。

(1)正しく恐れる

さまざまな報道、情報に過剰反応し、望ましくない対応をとる例が散見される。その一方で、感染症に全く無関心の人も少なくない。「ウイルス感染はいつでも、どこでも起こりうる」という意識を持ち、正しい知識で的確な行動をとる。

(2)ウイルスや菌の顔と性格を知る

ウイルスや菌によって、感染力、症状、死亡率、感染経路などが違う。新型コロナウイルスのように、まだワクチンができていないものの感染予防と拡大防止には、感染経路を断つこと。つまり、ウイルスが体内に入らないようにし、他の人にうつさないことが最も重要だ。新型コロナウイルスの感染経路である飛沫感染と接触感染を断つことが欠かせない。

(3)STOP感染「新生活習慣」をつくる

感染症予防の基本は、いつもの正しい手洗いと、せきエチケット。手を洗えないときに使う除菌目的のウェットティッシュ(アルコール含有)の携帯、多くの人が手に触れる場所の除菌も有効だ。また、免疫力を向上させる食品(例えば酪酸菌、乳酸菌入り)や、口腔ケアも効果がある。

(4)最新の対策技術にも目を向け情報収集する

ウイルス感染予防で最近、「持続除菌」の技術も出てきた。アルコールによる除菌は瞬間的な効果があるが、長続きはしない。現在は、除菌力を数日~数カ月も維持できる除菌剤が商品化されている。また、空気清浄機や換気システムの製品に、ウイルスや菌の除去に高い効果のあるものも出てきた。

(5)喉元過ぎても熱さを忘れない

もし新型肺炎が終息したら、国民の感染症への関心はまた薄れていくと推測される。しかし、今夏の東京五輪・パラリンピックでは、世界から多くの人が訪日する。海外ではインフルエンザ、デング熱、風疹など多くの感染症が猛威を振るっており、感染症対策はこれからが本番となる。

(6)新型肺炎以外の感染症にも目を向ける

東京五輪・パラリンピックに向け、他の感染症にも注意が必要。最近、毎年のように起きている大きな地震や台風、洪水などの自然災害が重なると、感染症の拡大リスクはさらに高まる。

(7)防災用品だけでなく、感染症対策用品も備蓄を

感染症も自然災害と同じように考えて、マスク、消毒剤、石鹸、口腔ケア用品、ウェットティッシュ(アルコール含有)、除菌クロスなどの備蓄が必要だ。特に避難生活ではお年寄りなど災害弱者に不可欠。ただし、現在は品薄なので、平時に戻ってから「感染症備蓄」を。

記者会見した「STOP感染症2020戦略会議」の賀来満男東北医科薬科大学特任教授(東北大学名誉教授)と国島広之聖マリアンナ医科大学教授=2020年2月10日、東京都千代田区
記者会見した「STOP感染症2020戦略会議」の賀来満男東北医科薬科大学特任教授(東北大学名誉教授)と国島広之聖マリアンナ医科大学教授=2020年2月10日、東京都千代田区

賀来座長は会見の冒頭で、「大型クルーズ船内でのアウトブレイク(感染症の突発的集団発生)は災害だ」「新型コロナウイルスの報道にかき消されているが、アメリカでは今冬のインフルエンザの感染者が2200万人を超え、死者は1万2000人を突破。日本でも昨年、インフルエンザで3325人が亡くなった」と指摘。国民が行政任せ、他人任せにすることなく、日ごろから感染症を意識してほしいと訴えた。

バナー写真:乗客乗員が新型コロナウイルスに集団で感染したクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」に向かう防護服を着た人たち=2020年2月10日午後、横浜・大黒ふ頭(時事)

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