「いざ、日本の祭りへ」(1) 三社祭と浅草ガイド

“江戸っ子”気分でぶらり浅草

江戸庶民の義理人情が今も残る浅草。江戸随一のハイカラな街として、当時最先端の食文化や流行グッズを発信する粋なお洒落スポットでもあった。いざ、江戸っ子が大好きだった“浅草ワールド”へタイムスリップ!

庶民信仰のお寺「浅草寺」を中心に繁栄を遂げた東京・浅草。江戸時代、その周囲には遊郭や娯楽場が立ち並び、江戸(東京)隋一の繁華街として栄え、発展を遂げた。下町情緒たっぷりの街には、客人をもてなすための料理屋が軒を連ね、問屋街には伝統工芸品が並ぶ。「新しいもの好き」なハイカラ江戸っ子がいち早く取り入れた食やグッズの数々に、そこかしこで出会うことができる。

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取材・文=本吉 恭子(太皷館を除く)
撮影=加藤 タケ美、コデラケイ

▼落語家・林家 正蔵が浅草の魅力を語るインタビュー記事はこちら

「江戸っ子は距離の取り方が絶妙なんです」 落語家・林家正蔵

駒形どぜう:せっかちな江戸っ子が好んだスタミナ食

江戸庶民に親しまれていた食材の一つが「どじょう」。頭から尾まで丸ごと食べるどぜう鍋は、栄養豊富なスタミナ源として食されてきた。

1801年創業の「駒形どぜう」は、そんな江戸の料理と雰囲気を楽しめる貴重な名店。越後屋助七が浅草寺の参拝客でにぎわう駒形にめし屋を開き、「どぜうなべ(どじょう鍋)」を出したところ、その美味しさから大人気となった。初代がどじょうを「どぜう」と表記したのは、4文字よりも3文字のほうが縁起がよいとされたため。七代目ご主人の渡辺隆史さんはこう語る。

「生きたどじょうに酒をかけ、酔ったところを甘味噌に入れてやわらかく煮込みます。骨までやわらかいんですよ。江戸時代のレシピをそのまま守っています」

1964年に建て替えられた現在の建物は、江戸時代の姿をそのまま再現。店の前の旧日光街道は、かつて江戸幕府に出仕する地方の大名が往来した道。そのため、覗き見できないように、前面を黒漆喰(しっくい)で塗り固めた窓のない建築物となっている。

「浅草はにぎやかな土地ですが、夜はとても静か。昔からの馴染みの人が多く、地域のつながりの強さを感じるのが魅力です。三社祭の日は特別で、朝から晩まで街全体がうきうきとした空気に包まれます」と渡辺さん。江戸っ子に愛された栄養満点のどぜう鍋こそ、エネルギーあふれる下町文化の名物料理だ。

1階の座敷は、江戸の雰囲気を色濃くとどめる。

1907年当時の店舗。現在の建物とほぼ変わらない造りで、店の前には荷運び用の牛をつなぐ場所があった。

「どぜうなべ」1750円。火鉢に鉄鍋をかけると、よい香りが立ち上る。たっぷりのネギとともにいただく。鉄鍋が浅いのは「江戸っ子はせっかちなので、すぐ温まって食べられるように」とのこと。

七代目ご主人の渡辺隆史さん。「どぜうなべは江戸のファストフード。昔は行商の人が早朝、市場で儲けたお金で食べに来ることも多かったそうです」。

どじょうは大分県の静謐な地下水で養殖。生きたまま店に届けられるので、新鮮そのもので風味も満点。

駒形どぜう 住所/東京都台東区駒形1-7-12 TEL/03-3842-4001 営業時間/11:00~21:00LO 定休日/無休・予約可(4名~)英語のメニュー/あり 平均予算/昼3000円、夜5000円 http://www.dozeu.com/

前川:200年の歴史を継ぐ、江戸スタイルのうなぎ料理

うなぎ「前川」の創業は19世紀初頭。川魚問屋を営んでいた勇右衛門という人が、屋台スタイルの店を隅田川沿いに構え、うなぎ料理と酒を出したことに始まる。

「かつては船で訪れるお客様が多かったそうです。特に花見の季節は、隅田川を見ながら前川のうなぎで一杯、というのがこの界隈の定番コースで、男女の逢瀬の場所としても人気だったと聞いています。川の景色が美しく、ロマンチックな場所だったからでしょう」とは六代目ご主人の大橋一馬さん。

現在のようなうなぎの蒲焼が食べられるようになったのは、江戸時代中期。西日本に比べて関東のうなぎは皮が厚いため、江戸ではそのまま焼かず、やわらかく蒸してからタレをつけて焼く調理法が一般的になった。もちろん前川もこの江戸スタイル。天然ものに近い環境で育てた「坂東太郎」という上質な養殖うなぎを使っているが、5〜11月は天然ものも入る。味の決め手は、代々継ぎ足しながら熟成させてきたタレ。1923年の関東大震災の際には、四代目がタレつぼを大切に抱えて逃げたという逸話も残る。

大橋さんは「隅田川越しに見えるのは、2012年6月に開業した電波塔の東京スカイツリー。文化も風景も、古いものと新しいものが一体となっているのが浅草の魅力だと思います」と語る。

江戸時代から受け継がれたうなぎ料理とともに、新旧融合したユニークな浅草の風景を楽しめる。

六代目ご主人の大橋一馬さん。客席の窓の外には隅田川越しに東京スカイツリーを望める。

「うな重」4095円から。うなぎは坂東太郎を丸ごと1匹分使用。注文後蒸し始めるので、料理が出るまで30分ほどかかる。「キモ焼き」1260円などを肴(さかな)に、酒を飲みながら待つのもよい。

3回タレにくぐらせて焼く。串を打たれたうなぎから、軽く焦がした香ばしさが漂う。

代々継ぎ足し熟成させたうなぎのタレ。焼いたうなぎの旨みが溶け込んでいる。

前川 住所/東京都台東区駒形2-1-29 TEL/03-3841-6314 営業時間/11:30~21:00 定休日/無休・予約可 英語のメニュー/あり 平均予算/5000円(コース料理は9450円~) http://www.unagi-maekawa.com/

神谷バー:日本初のバーで、名物カクテルにしびれる

知る人ぞ知る「神谷バー」。1880年、日本初のバーとして浅草に創業した。下町の社交場として親しまれてきたこのバーには、創業直後に生まれた名物カクテルがある。その名も「デンキブラン」。電気がまだ珍しかった当時、舶来品などの目新しいものは“電気○○○”と呼ばれたため、こう名付けられた。「ブラン」は、カクテルのベースとなっているブランデーのこと。そのほかジン、ワイン、キュラソー、薬草などがブレンドされたカクテルはほんのり甘く、アルコール度数30度(電氣ブランオールドは40度)という強さ。もともとは45度もあったというから、電気のようにしびれる強烈なカクテルだったに違いない。

「初代が考案したデンキブランのレシピは今も秘伝です。初めて飲むのに、なぜかなつかしい、郷愁を感じるカクテルだと言われます」とは五代目ご主人の神谷直彌さん。

かつては浅草六区(ロック)で活動写真を見終わるとその興奮を胸に神谷バーへ直行、小さなグラスでデンキブランを飲むのが庶民にとって最高の楽しみだったとか。デンキブランとともに生ビールを飲む人も多く、つまみは牛もつの煮込み、豚肉と玉ねぎを串にさして揚げた串かつなどまるでビアホールのような気取りのなさ。下町浅草に生まれたバーの、自由な空気とともに味わいたい。

150席もある店内は、ビアホールのような雰囲気。休日は特ににぎわう。

琥珀(こはく)色の名物カクテル「デンキブラン」260円(「電氣ブランオールド」は360円)。ほんのり甘いが、アルコール度数は30度と強いのでご注意。

レトロな雰囲気のカウンターでデンキブランを注ぐバーテンダー。

明治時代の店内は、長いカウンターに並んで座るスタイルだった。

神谷バー 住所/東京都台東区浅草1-1-1 TEL/03-3841-5400 営業時間11:30~22:00 定休日/火曜・予約可(平日のみ8人まで) 英語のメニュー/あり 平均予算/2000円 http://www.kamiya-bar.com/

浅草今半:最高の黒毛和牛を、正統のすき焼きで

すき焼きの名店として知られる「浅草今半」。1895年、当時まだ珍しかった牛肉を鍋に仕立てて商売を始めたところ、たちまち人気店となった。その創業者のひとり、岡山県出身の髙岡伴太郎という人が1928年に独立し、国際通り沿いに出したのれん分けの店が現在の「浅草今半」。五代目ご主人の髙岡修一さんはこう語る。

「創業当時、政府公認の食肉処理場が芝区白金今里町にあり、ここから牛肉を仕入れていたことから、”今里町”の”今”をとって店名につけたそうです。つまり、信頼できる上等な肉だけを扱っています、という誇りが店名に込められています」

上質な素材を追い求める姿勢は、今も変わらない。牛肉は、神戸牛をはじめ、厳しい目で選び抜かれた黒毛和牛のメス牛の肉のみを使用。職人の手により製造されているつややかな南部鉄器の鍋に、割下を流し、牛肉を焼き始めると、ジュジューッという音とともに香ばしさが室内に立ち込める。仲居さんが目の前ですき焼きをつくり、最も美味しい焼き加減のところを取り分けてくれるのもうれしい。

「浅草は、現在の東京で最も江戸を感じることができる土地。観音信仰の寺町文化が色濃く伝えられています。祭りの日にはオーダーメイドの半纏(はんてん)や和服を着るなど、江戸スタイルのお洒落をして歩くのも楽しいですよ」

江戸のにぎわいを体感できる下町で、特別な美食を楽しみたい。

五代目ご主人の髙岡修一さん。「浅草今半の名物土産となっている牛肉の佃煮(つくだに)は、祖父(三代目)が考案したんです。祖父はフードジャーナリストとしても活動していました」。

「極上霜降りすき焼御膳」1人10500円(写真は2人分)。細やかに入った霜(脂)は、芸術品のような美しさ。先付、5点盛りの前菜、ご飯、赤出汁、香の物がつく。

1.熱した南部鉄鍋に割下(醤油、みりん、砂糖を合わせたもの)を少し流す。鉄鍋が半分見えなくなるぐらいの量が目安。 2.割下が熱される間に、生玉子をはしで混ぜる。円を描くように軽く混ぜ、けっして泡立ててはいけない。 3.熱い鍋肌(割下のない部分)に肉を2枚置き、ある程度焼いてから、その旨みを割下に移すように絡めて引き上げる。 4.肉の旨みが溶け込んだ割下に野菜や豆腐を並べる。太く甘みの強いネギ、もっちりとした食感の丁子麩など、1品ずつ厳選された素材。

さらに肉も入れ、ほどよく火が通るように煮ていただく。煮過ぎず、ほんのり肉にピンク色が残る程度でよい。

仲居さんがちょうどいい焼き加減のところを、一人ずつ取り分けてくれる。

浅草今半 住所/国際通り本店:東京都台東区西浅草3-1-12 TEL/03-3841-1114 営業時間/11:30~21:30(LO20:30) 定休日/無休・予約あり 英語のメニュー/あり 平均予算/昼3000~4000円、夜1万円 http://www.asakusaimahan.co.jp

荒井文扇堂:余白を大胆に生かした江戸のデザイン

あおげば涼しい風を送ってくれる扇子。普段使いはもちろん、歌舞伎や舞踊、落語など伝統芸能の小道具としても欠かせず、古来より日本人に親しまれてきた。

120年余りの歴史をもつ扇子専門店「荒井文扇堂」は、歌舞伎役者や舞踊家、落語家などに多くのご贔屓をもつ扇子専門店。扇子職人としてデザインを手がけ、その技術を伝えている四代目ご主人、荒井修さんはこう語る。

「扇子には、もともと”結界(けっかい)”の意味があります。茶席で正座をし、自分の膝前にたたんだ扇子を置くのは、扇子を境に上座と下座を隔てるということ。扇子は涼をとるだけではなく、日本文化にも深く浸透しているんです」

江戸の扇子は、大胆な余白の生かし方などデザインが秀逸。龍の頭と尾だけを扇子の両端に描き、胴体を隠すことでその巨大さを表現したりする。ゴチャゴチャ描かずに、楽しませることが肝心、と続ける荒井さん。歌舞伎をモチーフにした絵柄も人気で、観に行く芝居の内容に合わせて扇子を誂える人もいる。

「浅草は、昔から江戸で一番の盛り場。浅草寺や浅草神社に全国から参拝客が集まったのもにぎわいの理由です」。下町の洒落文化とともに、荒井文扇堂の扇子も愛されてきた。

柿渋で幾度も繰り返し染めて強度を増した「渋扇」。昔は侍が使用するものだった。つややかで美しい。小3040円(女性用)、大3460円(男性用)。

歌舞伎をモチーフにした「持扇」(普段使い用の扇子)。左は中村勘三郎が演じた「法界坊」10300円、右は「弁天小僧菊之助」9500円。

オリジナル版画の「江戸一文字うちわ」550円。うちわは扇子と違い、コンパクトにたたむことができない。

四代目ご主人、荒井修さん。独創的なデザインも手がける扇子職人だ。

幾本もの骨でできた扇子を「要」と呼ばれる金具で1点に留める。熱した道具ではさんで調整。

扇子づくりに使う道具。左から折り型紙、紙断ち包丁、親摘(おやつみ)、平口あけ、拍子木(ひょうしぎ)。

荒井文扇堂 住所/雷門店:東京都台東区浅草1-20-2 TEL/03-3841-0088 営業時間/10:30~18:00 定休日/毎月20日過ぎの月曜・1点からオーダーメイド可能 英語の解説/なし 価格/「持扇」1100円~(手描きは女性用8200円~、男性用8900円~)

東京和晒(とうきょうわざらし):職人が染める手拭いで、江戸のお洒落を楽しむ

1889年、生成り色の木綿生地を白く染める工場として創業。当時はワラを燃やした灰を水に溶かした灰汁(あく)で煮てから石けんで洗い、さらし粉を使って漂白し、何度もゆすぐなどの工程を経て、生地を白く均一に染めた。

「生地を白く染めることで、浴衣(ゆかた)や手拭いの絵柄を色鮮やかに染めることができます。いかに上手に”さらす”(=白くする)かが職人の腕の見せどころです」とは、「東京和晒」四代目ご主人の瀧澤一郎さん。

1960年代は、浴衣の生地を白く染める技術で大繁盛。大勢の職人を抱え、全国で生産される浴衣用白生地のなんと3分の1を賄っていた。しかし、時代とともに和装離れが進み、浴衣の需要は減少。手染めを生業とする全国の工場も壊滅状態となってしまった。

一方、人気となったのが手拭い。バンダナのように頭に巻くなど、江戸流ファッションのお洒落さも脚光を浴びるようになった。現在、東京和晒では、全国の職人たちと協力し、手拭いを受注生産しており、オーダーメイドの注文は9割を占めるという。

「祭りは浅草の象徴ですが、中でも三社祭は別格で、莫大なエネルギーが街中にあふれます。この下町の結束を守りたくて、“浅草お祭りミュージアム”を設立しました」

浅草お祭りミュージアムでは、祭りに関する布物と文化を発信。手拭い、半纏製作をはじめ、さまざまな相談相手となってくれる。

手拭いを染めるための型紙。和紙に紗(目の細かい絹製の網)をうるしで貼っている。手で切り、手で貼る、繊細な仕事。

上の型紙で染めた手拭い。「注染(ちゅうせん)」といい、職人による手染めの技法。

四代目ご主人の瀧澤一郎さん。「あまり知られていませんが、手拭いは手軽にオーダーメイドできるんですよ」。

手染めの手拭い1枚800~1000円。オーダーメイドは100枚3万円~(手染めは5万円~) 東京和晒 住所/東京都葛飾区立石4-14-9 TEL/03-3693-3334 http://www.tenugui.co.jp/

絆纏屋(はんてんや):祭りを盛り上げる、個性豊かな手染めの衣装

浅草の人にとって必需品なのが、半纏(はんてん=着丈の短い上着)など祭りのための衣装や用品。100年以上浅草に続く呉服店に生まれ育った小島章弘さんは、祭り好きの仲間たちのために祭り用品専門店「絆纏屋」を開いた。

「浅草は祭りがなければ成り立たない。地元の仲間は三社祭をはじめとする祭りを通じて強い絆で結ばれ、地域社会の結束を強めています。そんな祭りを盛り立てたくて、この商いをしています」

扱う衣装の多くは、職人が1枚1枚丹念に手で染め、仕立てたオリジナル。「注染(ちゅうせん)」という染色技法によるぼかしや微妙な色合いは熟練した手仕事ならではのものだ。伝統的な「江戸小紋」には、台所用品であるかごや雲を描いたもの、文字を配したものなどがあり、江戸っ子の遊び心を読み解くのも楽しい。

半纏の中に着る「鯉口(こいくち)シャツ」の絵柄は100種類以上。工場で大量生産される商品にはない、少量生産かつオリジナルデザインの衣装に、江戸っ子ならずともお洒落心をくすぐられる。

浅草の老舗呉服店に生まれ育った、ご主人の小島章弘さん。祭り好きな仲間たちが「絆を纏(まとう)」という意味を込めて、「半纏」ではなく「絆纏」の文字を店名に当てた。

100種類以上のデザインがそろう鯉口シャツ。3980円~(手染め4900円~)。

江戸時代、庶民の間で着用された防寒着の「半纏(はんてん)」。2500円~(手染めは無地2万円~、柄2万8000円~)。

絆纏屋 住所/東京都台東区浅草1-37-11 TEL/03-5827-0852 営業時間/10:00~18:00 定休日/水曜 英語の解説/なし http://www.hantenya.com/

太皷館:世界の太鼓に出会える空間

1861年創業の宮本卯之助商店。三社祭の本社神輿を復元したことで知られているが、太鼓や祭礼具の取り扱いがそもそもの始まり。江戸時代、太鼓は庶民の生活に深く根付いており、時を知らせる「時の太鼓」がある城下町には太鼓屋が存在していた。宮本卯之助商店も茨城県の土浦で太鼓店として創業した。

「現在、太鼓は『音やリズムを楽しむ楽器』として人びとに親しまれていますが、そういった芸能の発生以前に、合図としての役割を担い、また宗教行事や祭礼と密接な関係がありました。日本で太鼓が純粋に『音楽』として認識されるようになったのは、実は戦後のことです。古くは直会(なおらい=儀式の後の飲み食いの宴)で使われた太鼓が、『伴奏音楽』として芸能となり、それが今日では独立して、『組太鼓』やソロの演奏などに使われるようになったんです」とは、宮本卯之助商店広報部・鈴木啓美さん。現在、宮本卯之助商店では神社仏閣用の太鼓はもちろん、雅楽器、御囃子用、歌舞伎や能楽などの伝統芸能用、舞台演奏用太鼓など、さまざまな太鼓を製造、その品質はアーティストからも高く評価されている。

インドの太鼓の種類は豊富で250種を超える。

ドーンと心にまで響き渡る太鼓の音…そんな太鼓の魅力に触れられるのが、宮本卯之助商店が設立した世界の太鼓資料館「太皷館」だ。和太鼓だけでなく、世界各国から蒐集してきた900点を超える太鼓から常時約200点を一般に公開。その多くは実際に触ったり、音を出して体験できる。

アジア、アフリカ、ヨーロッパ、オセアニアなど地域ごとに展示された太鼓は、鼓面を直接たたくものもあれば、スティックを使ったり、空気に触れさせて音を出したりと実にさまざま。太鼓の概念が覆されそうだ。「中でもインドの太鼓の種類は豊富で250種を超えているほど。その多くが2000年前からほぼ変化せず伝承されています。また、世界の太鼓をよく見ると、遠く離れた地域なのに基本的な形態が共通しているものがあります。共通点を探しながら世界の太鼓に触れれば楽しさ倍増ですね」とは、「太皷館」の学芸員・蟻川純子さん。太鼓の意外性や魅力を浅草の「太皷館」で是非体感してもらいたい。

ガラムート(パプアニューギニア)。叩き方のパターンはさまざまな合図となり、コミュニケーションの手段として使われる。

風音車(かぜのおと、日本)。手前のレバーを時計回りに回すと風の音が出る。自然の音を楽器で表現するのは、日本特有ともいえる。

バラフォン(アフリカ)。木片の下に、共鳴用のひょうたんが取り付けてある。木琴のような音を奏でる。

クイーカ(ブラジル)。ぬれた布で、鼓面裏に固定された盆をこすることで音を出す擦り太鼓。

下の動画で、ガラムート、風音車、バラフォン、クイーカの音が聴けます。

長胴(ながどう)太鼓(日本)。演奏用、儀式用などで革の部分の処理の仕方が違う。演奏用【写真上】は革が緩くなってきた時、その革自体を使って締め直す。そのため、耳(縁)の部分を残して、竹の筒を通して引っ張れるようになっている。神社仏閣などの儀式用【写真下】は、張りかえないことを前提にしているため、見た目の美しさを優先して耳の部分を切り落としてしまう。

宮本卯之助商店西浅草店(1F)では、お祭りグッズも展示・販売している。

本革を使った太鼓ストラップ【手前】長胴太鼓(1785円)。【奥】プチ樋とプチ締(1260円)。

獅子舞にも男女の区別がある。【右】オスの獅子舞は宇津(うず)と【左】メスの獅子舞は権九郎(ごんくろう)。角や歯の形などで見分ける。【手前】獅子舞魔よけお手玉(630円)。

太皷館 住所/東京都台東区西浅草2-1-1 宮本卯之助商店 西浅草店ビル4F TEL/03-3842-5622 開館時間/10:00~17:00 定休日/月・火曜日(ただし、月曜が祝日の場合は開館) 英語の解説/一部あり http://www.miyamoto-unosuke.co.jp/taikokan/ (イベント情報はhhttp://www.miyamoto-unosuke.co.jp/event/index.html

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