眞子さまの婚約と皇室の将来

社会

天皇陛下の直系の孫、秋篠宮家の長女・眞子さまが婚約に向けて準備されていることが5月に突然報じられ、国内は祝福ムードに包まれた。今回、3度目の海外公式訪問で精力的にご公務をこなした眞子さま。しかし結婚すれば皇族を離れ、一民間人として生活することになる。

婚約報道で話題を集めている秋篠宮家の眞子さま(25)。6月1日、ブータンで開催される「花の博覧会」に招待され、ブータンの国際空港に到着した。

皇室は日本の歴史と文化の体現者とも言われる。眞子さまは、この訪問で積極的に着物をお召しになった。「花の博覧会」の開会式に選んだのは、染めた雲の図柄に金箔や金糸をあしらった友禅染の振袖。雲は、古来より神や龍のすみかとも言われ、吉祥を表す文様だ。吉祥柄の鳳凰と四季の花々で彩られた帯も、華やかな式典にふさわしい装いだった。

人数が減り、将来が危ぶまれる皇室

天皇、皇后両陛下の次男、秋篠宮さま(51)と紀子さま(50)の長女である眞子さまは、直系の女性皇族を意味する「内親王」の称号を与えられた女性だ。英国のエディンバラ大学やレスター大学大学院博物館学研究科で美術史を学んだ。ブータンでも流ちょうな英語を話し、皇室外交の一端を担う姿は自信にあふれていた。だが、いま皇室は眞子さまという公務の貴重な担い手を失おうとしている。この夏、国際基督教大学(ICU)時代の同級生、小室圭さん(25)との婚約話が進んでいるからだ。

ワンチョク国王夫妻表敬のため国王執務室に向かう眞子さま=2017年6月2日(時事)振袖に描かれた常緑樹の松は長寿の象徴とされる。刺繡、絞り染め、友禅染めなど手の込んだ技法で松を表現している。

眞子さまと小室さんは、大学の留学に関する意見交換会の席で知り合い交際に発展。約1年後に小室さんがプロポーズし、これまで5年間の交際を続けてきた。眞子さまは東京大学総合研究博物館の特別研究員を続けながら、同時に皇族の一員として公務でも活躍している。小室さんは法律事務所で働いている。

眞子さまが「公務の貴重な担い手」というのは理由がある。男系男子による血統の維持を原則とする皇室は、いま人数が減り危機に直面している。天皇と皇族は現在19人で、30代以下の若い皇族は眞子さまを入れてわずか8人。うち、7人は女性だ。現在の法律では、独身の女性皇族は結婚すると皇族の身分から外れてしまう。眞子さまの結婚は来年に予定されており、今回のブータンへの訪問は最後の海外公務になるかもしれない。

このままでは若い女性皇族の7人が次々に皇室を離れ、将来残るのは眞子さまの弟、悠仁さま(10)だけになるという可能性もある。

行方が見通せない女性宮家議論

皇族の危機的状況に歯止めをかけようと、宮内庁は政府に説明を続けてきた。それを受けて2012年の秋、民主党政権下で、女性皇族が結婚してもその夫と家族の当主として一代限りで皇室に残る「女性宮家」創立に向けた検討が緊急性の高い課題として打ち出された。当時の宮内庁幹部によれば、両陛下も、眞子さまをはじめ、直系の女性皇族には皇室に残り、将来の天皇となる悠仁さまを支えてほしいと考えていたという。

悠仁さま誕生から間もなく、眞子さまが16歳を迎えた頃から、眞子さまがご両親と同行する公務が桁違いに増えた。両陛下が眞子さまにかける期待は大きく、学業と公務を懸命にこなす姿に目を細めたこともあった。

しかし2012年末、政権が自民党に代わると女性宮家論議は下火になった。そして昨夏、天皇陛下が高齢により象徴の務めが難しくなっている旨のビデオメッセージを公開した。これを受けて、今国会では「天皇の退位等に関する皇室典範特例法」が成立し、「女性宮家の創設等」の検討を求める付帯決議案も可決された。

国会の保守層を支持基盤とする安倍政権は、「女系天皇につながる」と女性宮家の創設に反対の立場をとっている。女性宮家を巡る議論も一時熱を帯びたが、結局、特例法案の付帯決議では「女性宮家創設への構想」の検討時期や内容などは具体的に明示されないままだった。

今後、女性宮家創設が何らかの形で進むとすれば、眞子さまの結婚後の生活にも影響してくる。一人の一般女性としての日々を送るのか、皇室の将来を見据えた他の選択肢があるのか。国民は、皇室の在り方の行方を見守っている。

バナー写真:ブータンで「花の博覧会」を視察されるワンチュク国王夫妻と眞子さま=2017年6月4日(時事)

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