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寝ても覚めても (2018年9月)
[2018.08.25]

『万引き家族』がパルムドールを受賞した今年のカンヌ映画祭で、コンペティション部門に出品されたもう1つの日本映画が『寝ても覚めても』。気鋭の若手、濱口竜介監督が手掛けた初の商業映画がついに日本で公開される。

作品情報

©2018 映画「寝ても覚めても」製作委員会/ COMME DES CINÉMAS

  • 監督=濱口 竜介
  • 原作=柴崎 友香『寝ても覚めても』(河出書房新社刊)
  • 脚本=田中 幸子、濱口 竜介
  • キャスト=東出 昌大、唐田 えりか、瀬戸 康史、山下 リオ、伊藤 沙莉、渡辺 大知(黒猫チェルシー)、仲本 工事、田中 美佐子
  • 製作=『寝ても覚めても』製作委員会/ COMME DES CINÉMAS
  • 配給=ビターズ・エンド、エレファントハウス
  • 製作年=2018年
  • 製作国=日本・フランス
  • 上映時間=119分
  • 第71回カンヌ国際映画祭コンペティション部門正式出品
  • 9月1日(土)より、テアトル新宿、ヒューマントラストシネマ有楽町、渋谷シネクイントほか全国公開
  • 公式サイト=http://netemosametemo.jp/
  • フェイスブック=https://www.facebook.com/netemosametemo.movie/

見どころ

『寝ても覚めても』は、これまでドキュメンタリーや自主映画を撮り続けてきた濱口竜介監督にとって初の商業映画なのだが、それがいきなりカンヌ映画祭のコンペティション部門に選出されるというとてつもない快挙を果たした。カンヌでの上映翌日、あるフランスの映画評論家がル・モンド紙に寄せた批評の書き出しが印象的だ。「新しい映画作家の鮮烈な登場には、その世界に入っていく喜びとそれに少しずつ親しんでいく喜びが重なり合うとき、常にどこか感動的なものがある」。

濱口竜介監督 ©2018 映画「寝ても覚めても」製作委員会/ COMME DES CINÉMAS

この「発見と親しみが重なる喜び」とは、カンヌ開催と同時期に、前作の『ハッピーアワー』(2015年)がフランスで初めて公開されたことを受けたものだ。『ハッピーアワー』は、ほとんど演技経験のない女性4人が2015年のスイス・ロカルノ映画祭で最優秀女優賞を獲ったことで話題になった。5時間17分という商業映画の常識では考えられない長尺のため、フランスでは3部に分けて1週間ずつずらして封切られ、10万人の観客を動員したという。この期間、フランス人にとって正確に発音するのがもっとも難しそうな濱口竜介という名前が、少なからぬ映画好きの間で語られたはずである。

その若手監督が今度は「普通」のフォーマットと「プロ」の俳優陣で映画を撮り、カンヌに参戦するというのだから、映画関係者の注目が集まらないわけがない。『ハッピーアワー』で見せた常識破りの部分が、商業映画の枠組みでどんなふうに現れてくるのか、期待を込めたまなざしが注がれたことだろう。分かりやすく前作からつながる要素を一つ挙げれば、本作でも芝居経験のあまりない女優を主役に起用したことがある。

ル・パリジャン紙は「惑乱させる日本女性」と題して、主人公の朝子を演じた唐田えりかを中心に論評している。日本人の誰もが知る主演の東出昌大については、「一人二役を見事にこなした」とあくまで前置きにあっさりと言及しただけだから、この評者がいかに彼女から強い印象を受けたかが分かる。「何とも特異な朝子という女性を見事に演じ、目が離せなかった。この若い女優は、前に出てくることはほとんどないが、ときに驚くほどの閃光を放ち、繊細に、まれに見る的確さで雰囲気を伝えてくる。女優賞の有力な候補である」と絶賛したのだ。ちなみにこの作品のフランス語タイトルは『Asako I & II』。朝子という見たこともないような女性像、その両義性を前面に押し出したタイトル選びであったのではないかと想像する。

唐田えりか(左)と東出昌大 ©2018 映画「寝ても覚めても」製作委員会/ COMME DES CINÉMAS

濱口竜介監督は原作の「同じ顔をした二人の男と恋に落ちるという荒唐無稽」なストーリーに引かれたと繰り返し語っている。ありえない設定でありながら、ともすると過去の男に未練を持ち続けるというありふれた三角関係にも帰結し得る。ところが濱口監督は、その非日常と日常の境界にさりげなく裂け目を生じさせ、互いを巧みに転位させていく。その考え抜かれた仕組みによってこそ、物語は破綻することも陳腐になることもなく、生き生きと跳躍する。

私たちはこの時代、人びとの顔色をうかがい、多数の意見に同調しながら、努めて自分を危険にさらさないように生きている。当たり障りのないことばかり言い合い、相手を傷つけない代わりに、本当に分かり合うこともない。濱口監督が描く人間関係は、見た目はそれとよく似ていながら、登場人物が企てる小さな冒険によって、絶えず魅力的に揺らいでいく。そこに私たちは、表面的な温かさや冷たさとは違う、もっと真に迫った体温を感じ、惑わされながらも、不思議な感動を覚えるのだ。(編集部)

©2018 映画「寝ても覚めても」製作委員会/ COMME DES CINÉMAS

©2018 映画「寝ても覚めても」製作委員会/ COMME DES CINÉMAS

©2018 映画「寝ても覚めても」製作委員会/ COMME DES CINÉMAS

©2018 映画「寝ても覚めても」製作委員会/ COMME DES CINÉMAS

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