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2018/4/10

知っていると100倍おいしい酒のABC(2) —日本酒の造り方—

それぞれの気候と風土に合わせて、米と米麹(こめこうじ)と水を醸すのが日本酒。世界でもまれにみる複雑な工程を分かりやすく説明する。

基礎の基礎:SAKEとはなにか

SAKEの原料は?どうやって造る?アルコールが強いのでは?日本のどんな場所で造られている?酒造りの歴史は?まずは、日本酒の基礎の基礎を知ってみよう。

四季のある気候、清らかな水。自然の恵みと高い技術力、クラフトマンシップにより生み出される地域文化の特徴が生きた醸造酒。それが現代の日本酒である。 

  • ワインやビールと同じ、発酵させて造る醸造酒に分類される。
  • 主原料は、米と米麹と水。
  • 北から南まで全県(47都道府県)に約1400の酒蔵があり、気候や風土に合う日本酒が醸されている。
  • 起源は紀元前。遅くとも8世紀には米と米麹で酒が造られていた。諸説あり定かではないが、日本に稲作が定着した今から2500年前には米の酒があり、奈良時代(71094年)には米と米麹で酒が造られたという記述がある。
  • 味の特徴は、繊細で複雑なうま味と香り。

日本酒の造り方:世界でもまれにみる複雑な工程で醸される「技術の酒」

日本酒は透明に近い色をしているところから、ジンやウオッカ、中国の白酒(パイチュウ)のようにアルコール度数の高い蒸留酒(アルコール度40~75度程度)と間違われることもある。だが、日本酒は、ワインやビールなどと同じ醸造酒。アルコール度数は14~17%が中心で、5~8%程度の低いものもある。(ワインは7~14%が主流)

主原料は、米と米麹と水(純米酒や純米吟醸など)。ここに醸造アルコールを加えて造るものもある(吟醸酒や本醸造、普通酒など)。

ワインと酒の製造工程を模式図にしてみた。

図を見て分かるように、酒は、麹と酵母による2度の発酵工程を踏み、ワインと比べて工程が非常に多く、人の手間がかかる。ワインの場合は、ブドウに含まれる糖を、酵母という微生物が分解することで発酵することから「単発酵」と呼ばれる。だが、日本酒の主原料である米の主成分はでんぷん。そのままでは酵母を加えても発酵しない。そこで「麹菌」*という微生物の力を借りて、1度でんぷんを糖化させてから、酵母を加えて発酵させる。さらに発酵しながら糖化作用も並行して行われることから「並行複発酵」と呼ばれる。

30℃ほどに保った麹室(こうじむろ)という部屋のなかで、蒸した米に種麹(麹菌の種)をふる杜氏。その後、布で包んだり、広げたり、木の箱に小分けをして、適切な温度と湿度を保つための手作業を繰り返し、48~72時間をかけて米麹を完成させる。『若波』の醸造元、若波酒造(福岡県)

*麹菌 …醤油や味噌など日本固有の調味料を作るためにも必要な微生物。和食の特徴でもある「うま味」を生み出すにも欠かせない。麹菌は、世界のどこにもない日本固有のオリジナルの菌として、2006年に日本醸造学会に「国菌」と認定されている。

ワインは、発酵のメカニズムが1回であり、原料は葡萄だけである。だからこそ、ブドウの品質がストレートに味に投影される。従って、ワイン醸造家たちは、上質な葡萄を栽培することに力を注ぎ、多くの醸造家たちは、1年の大半を葡萄畑で過ごしているのである。ワインが「農業の酒」と言われるゆえんだ。それに対して日本酒は、酒米の質もさることながら、「麹菌」と「酵母」、2つの微生物の力を借りて、複雑なメカニズムで造られるため、人の手による醸造の技が味を大きく左右する。従って、初冬から春までの酒造期に、醸造家たちは、酒蔵に泊まり込んで酒造りを行う。その意味では「技術の酒」と言えるだろう。

また、完成した酒の約7割が水だ。仕込みに使う水の質が、日本酒の味わいに大きく左右するところも、ワインとの違いである。そこで、気候風土や水質などにより、異なった酒造りの流派が生まれたのだ。

バナー写真:蒸したての熱々の米は、すのこを敷いた布の上に、蔵人(くらびと)たちの手によって広げられ、酒蔵の冷気で一気に温度が下がっていく。土造りの酒蔵の中に蒸気が立ち上る。「十四代」醸造元の高木酒造(山形県)。

写真撮影=山同 敦子、シリーズ題字=金澤 翔子(書家)

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