ICT教材、外国人の子の学習に活用拡大
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教員不足を補う画面越しの学び:福岡市のオンライン授業

福岡市教委が試行を始めた、外国人の子ども向けの遠隔授業=田中圭太郎撮影
ICTが効果を発揮しやすいのは、日本語の専門人材が不足する教育現場だ。
福岡市教育委員会は、外国ルーツの児童生徒が急増する中、オンラインで拠点校と各学校を結び、画面越しに日本語指導を行っている。日本語担当教員を十分に配置できない学校にも学習機会を届けようという試みだ。
利点は、子どもが在籍する学校ごとに指導態勢を整えなくても、一定の質を保った授業を提供しやすい点にある。ICTを使えば、地域差によって学びの機会が左右されにくくなる。ただ、日本語を学び始めたばかりの子どもが画面上の前でどう集中力を保つのか、などの課題は残されている。
記事を読む:《広がるICT学習1》福岡市教委が挑むオンライン授業:複数校に発信、人材有効活用
楽しく学べるタブレット教材:『すらら にほんご』

タブレット上で会話の学習ができる『すらら にほんご』の画面。下部には各言語の字幕があり、理解を助ける。字幕はクメール語=すららネット提供
ICTは、日本語教育の教材のあり方も変えつつある。
『すらら にほんご』は、日本語教育の専門家の監修のもと、声優によるナレーションに母語字幕やアニメーションを組み合わせ、日本語能力がほとんどない段階から学べるよう設計されたタブレット教材だ。文字だけでなく、音声や映像を通じて語彙や表現を理解でき、初期段階の学習者でも楽しく取り組める。
日本語教育では、子どもの年齢や来日時期によって、日本語力に大きな幅がある。教室で同じ説明を一斉に聞くだけでは、理解の差が広がりやすい。ICT教材なら、子どもが自分の理解度に合わせてAIが問題を提供するなど、先取りや復習も効率的にできる。教員にとっても、授業の補助教材として活用しやすく、限られた時間の中で個別対応を進める助けになる。
※詳細記事は近日公開
電子連絡帳がつなぐ学校と家庭:『E-Traノート』

パソコンに表示した『E-Traノート』の画面。要件を選択すると定型の文章ができあがる=宇都宮大学・若林秀樹客員准教授提供
ICTの役割は、直接の教育にとどまらない。学校と家庭をつなぐことも、大きな機能の一つだ。
全国160校で活用されている多言語のIT 連絡帳『E-Traノート』は、学校からの連絡を多言語で家庭に届けるシステムで、E-Traは「イー(E)感じに」と「Translation(翻訳)」を掛け合わせた造語。学校からのお知らせを日本語が苦手な保護者にも翻訳して届ける役割を表している。宇都宮大学の若林秀樹客員准教授が考案し、大手印刷会社が開発・提供している。
教職員が日本語で入力し、事前に登録された500の定型文や単語を選びながら文章を作成する。各家庭には登録言語に応じて翻訳された内容が届く。
外国ルーツの子どもの保護者と、持ち物、宿題、行事、面談、欠席連絡など、日常の細かな情報が共有できなければ、子どもの学校生活や学習にも影響が及ぶ。E-Traノートのような仕組みは、保護者との意思疎通を助け、学校への信頼感を高めるうえでも有効だ。
※詳細記事は近日公開
「代替」ではなく支援の基盤へ
福岡市の遠隔授業は、教員不足や地域差を補う。「すらら にほんご」は、一人ひとりの習熟度に応じた学びを支える。『E-Traノート』は、学校と家庭の言葉の壁を低くする。3つの事例が示しているのは、ICTが単なる便利な道具ではなく、外国ルーツの子どもの教育を成り立たせる基盤になり得る、ということだ。
政府は1月に決定した「外国人の総合的対応策」で、「日本語指導が必要な児童生徒に対し、円滑な指導が行われるよう、ICTや生成AIの活用も含めた効果的な指導内容・方法等についてガイドラインを体系的に示す」と明記している。
ただ、ICTですべてが解決するわけではない。対面での見守りや、教員、支援員による丁寧な働きかけは欠かせない。それでも、人手不足と多言語化が進む中で、ICTは教育の質を保ち、学びの機会を広げるための重要な支えとなる。外国人の子どもが地域や家庭環境に左右されずに学べるようにするためにも、活用をどう広げるかが問われている。
取材:ジャーナリスト 田中圭太郎
バナー写真:外国人の子どもの日本語学習や学校生活を支えるICT教材