路上生活者にルールはいらない

ダンスの経験を一切持たないホームレスたちを前に、一度はダンスの振付を覚えてもらおうと試みたものの、それでは彼らの個性が生かせないことに気付いたアオキ。彼らを型にはめるのではなく、それぞれの生き方に合わせたやり方で最大のパフォーマンスが引き出せるよう、自らの発想を切り替えた。

© Tokyo Video Center
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「最初は、稽古に来られないときは事前に連絡するというルールを設けたんですが、今は休みたいときは自由に休んでもいいし、すべて彼らに任せています。そもそも自分がやろうとしていたのは、社会からこぼれた人たちの踊りだったはずなのに、そこにルールを課せば彼らの生きる身体が死んでしまう。そうなるくらいなら、来なくてもしょうがないと自分の意識を変えることにしたんです」

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果たしてそれで、彼らが稽古に通い続けるモチベーションが保たれるのだろうか。

「やっぱり誰しも拍手をもらいたいわけですよ。稽古に来ないと当然出番も減るわけで、本番で拍手をもらえるのは真面目に稽古に来た人たちなんです。そうすると、ルールを作らなくても自然と稽古に来てくれるようになる。もちろんありのままのおじさんたちの姿を見せたからといって、それがそのまま作品になるわけではありません。どうすれば彼らの身体や感覚を生かせるのかを考えながら、ダンス全体のクオリティを維持するのが、主宰者としての僕の役割なんです」

彼らがメディアに露出する機会が増えるにつれて、特にネット空間では「踊れるなら働け!」といった容赦ない声も寄せられる。だがアオキはそういった「匿名の人々」にこそ、まずは「ソケリッサ!」のダンスに触れてほしいと話す。

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「そういう発言をする人自身も、きっと苦しみの中で生きているんでしょう。その気持ちは直接目の前でぶつけに来てください。でも、もともと僕は、おじさんたちの自立を促すためにこの活動を始めたわけではないんですよ。彼らがダンスを通じて自分の生き方を見つめ直すのは、もちろん素晴らしいことなんだけど、最初からそれを目標にしてしまうと、踊りそのものに強度がなくなってしまう。あくまで僕は彼らの踊りに関心があり、踊りを介して彼らと付き合うようにしています。私生活にはあまり踏み込まない。だから僕自身、この映画を通じて、彼らについて初めて知ったことも多いんです(笑)」

インタビュー撮影:花井 智子
聞き手・文:渡邊 玲子

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作品情報

  • 出演:アオキ 裕キ、横内 真人、伊藤 春夫、小磯 松美、平川 収一郎、渡邉 芳治、西 篤近、山下 幸治
  • 監督・撮影:三浦 渉
  • 配給:東京ビデオセンター
  • 製作年:2019年
  • 製作国:日本
  • 上映時間:99分
  • 公式サイト:https://thedancinghomeless.com/
  • 3/7(土)、シアター・イメージフォーラムほか全国順次ロードショー

予告編