位置情報に別の情報をかぶせた「メタ情報ゲーム」

「ポケモンGO」がリリースされて、世界で報道されたことの大半は人の移動に関することだった。「ポケモンGO」のプレイ中に強盗事件が起きた、交通事故が起きたなどの負のニュース。その一方で運動不足の解消につながる、自閉症が治った、被災地の復興に役立てようとしている、などの公益性を伝えるニュースが連日報道された。やはりゲームは室内で遊ぶものという先入観があるのだろうか。プレイヤーがスマートフォンを持って屋外に出ることに人々の関心が高かったことを示している。

実は、「ポケモンGO」のように位置情報を使ったゲームは、日本では2000年ごろ、“ガラケー”時代からあった。通信会社のネットワークには、携帯電話の“居場所”を基地局に信号で知らせる「位置登録」というシステムがある。このシステムを応用すれば位置情報ゲームは昔からつくれたのである。

GPSが普及してからはさらに位置情報ゲームはつくりやすくなった。このような経緯があるため、日本では位置情報ゲームはすでに100種類近くリリースされている。決して成功例が多くない位置情報ゲームだが、なぜ「ポケモンGO」は大成功を収めたのか? 数ある位置情報ゲームの一つと捉えるよりも、メタ情報ゲームと捉えると、将来の発展性を想像しやすい。

現在、GPSの普及により、地球上のあらゆる場所の経度緯度は、高精度なデジタルデータで表すことができる。その座標に「渋谷駅」「エッフェル塔」のような実在の地名をかぶせて表示すれば実用アプリになる。だが、そこにメタ情報(データについてのデータ)を重ねると、その土地は「ポケストップ」「ジム」のようにまったく別の意味を持つ。「ポケモンGO」は現実の情報に別の情報をかぶせたメタ情報ゲームでもある。位置情報に限らない。バーコード、画像データ、音声の波形など、あらゆるデジタルデータにメタ情報が重なることによって、新しいゲームの可能性は広がる。

スマホゲームで街に遊ぶか、バーチャル世界に遊ぶか

振り返ると「ポケモンGO」は時の運にも恵まれていた。他のゲームの流行に陰りが見えている時期での発売だった。

世界規模でゲーム市場を俯瞰(ふかん)すると、ここ数年売れているゲームは大きく言って2種類しかない。まずはゲーム専用機のゲームでいえばファースト・パーソン・シューター(一人称視点のガンシューティングゲーム/FPS)である。FPSは日本では不人気ジャンルだが、グローバル市場では圧倒的な人気を誇る。昨年、売れたゲームのベスト10のうち6タイトルはFPSだった。

もう一つはスマートフォンを使ったカジュアルゲームである。色合わせのパズルゲーム、あるいは簡単な操作のアクションゲームを基本プレイ無料で大量に拡散させる。ゲームを有利に進めるための追加課金でもうける。

合理性からつくられたFPSとカジュアルゲームが2大勢力として幅を利かせていたのだが、昨年あたりから陰りを見せてきた。市場は頭打ちになったのだ。そこに新風を吹かせたのが「ポケモンGO」だ。家庭用モニターであれ、スマートフォンのモニターであれ、画面内の出来事だけで完結する遊びは限界に達しつつある。そんな傾向の反動として「ポケモンGO」はヒットした。市場は敏感だ。画面内だけでゲームは進まない。画面内と画面外(実生活)をかけ合わせる遊びは今後増えるだろう。

今夏は「ポケモンGO」フィーバーが続きそうだが、秋からはPlayStation VRに注目したい。スマホ画面を持って街に出るのが「ポケモンGO」。対してヘッドマウントディスプレイを用いて画面を目の前に固定させるのがPlayStation VR だ。世間ではライバルとされる任天堂とソニー。2社が目指すところは正反対だ。だが、今までの四角い画面を見て遊ぶだけのゲームから、一歩踏み出すという点では共通している。

現在のVR(バーチャルリアリティ=Virtual Reality)ゲーム は、今までどこかで見かけた立体視ゲームではない。認知心理学の世界では「目は網膜に信号を送るレンズにすぎない。人間は脳でモノを見る」という理論がある。PlayStation VRは脳が「現実」「本物」と判別するほどのクオリティに達している。体験してみるとその刺激が体内に残る感じがする。

スマートフォンを持って街に出る「ポケモンGO」。ヘッドマウントディスプレイを用いて画面を目の前に固定させるのがPlayStation VR 。製品のカタチは正反対だが、ゲームは変わろうとしている。2016年は、ゲーム産業の歴史の中で大きな節目の年になりそうだ。

(2016年8月15日 記)

バナー写真=2016年7月22日、東京・JR渋谷駅のスクランブル交差点で同日日本でリリースされた「ポケモンGO」を楽しむ人々(時事)
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