「核実験終了宣言」と米朝交渉

北朝鮮は、どこに向かおうとしているのか。核実験とミサイル実験が続けば、中国と米国はやがて「核保有国として認定するか、崩壊策をとるか」の選択を迫られる。北朝鮮にとって最悪の未来を、指導部も理解はしているようだ。

というのも、数年前に北朝鮮の首脳部は「核保有を確立して核実験終了を宣言し、米朝交渉に臨む」との戦略を立てた。米政府の情報責任者を密かに平壌に招いてもいる。

この戦略を立案したのは、金正恩委員長の側近である金英哲・副委員長である。彼は、なおナンバー1の側近として軍事や外交戦略に関与している。日本人拉致問題の解決には、金英哲は最も重要な人物だ。

この戦略がなお生きている事実を、核実験後の「核兵器研究所」の声明が明らかにした。声明には、日本をはじめ米韓では注目されなかった重要な言葉が入っていた。声明は「(核弾頭の)性能と威力を最終確認した」と述べた。朝鮮語を直訳すると「最終的に確認した」の表現で、新聞はそう報じているが、誤訳だ。正確な翻訳は「最終確認した」となる。

「最終確認」は、「これ以上核実験は必要なくなる」との意味を含んだ用語だ。今回が「最終」なのか、この言葉を続けて使用し、「最終」との認識を定着させようとしているのかは、明らかでない。しかし、「最終」の言葉を使わず、単に「確認した」でも文章は通じるのに、わざわざ挿入した意図が存在するのは間違いない。だが、軍の幹部たちが「核実験終了宣言」に簡単に応じるとは思えない。このためか、11日の声明で「核武力の質・量的強化措置の継続」を述べ、実験継続を示唆したが「核実験継続」の表現は使わなかった。

北朝鮮の軍隊は、兵器は旧式化し石油もわずかしかなく、戦争ができない軍隊だ。だから、「石油全面禁輸」をすれば北朝鮮軍は崩壊する。将軍から兵士まで「米国の攻撃」を最も恐れている。勝てないからだ。その不安を払拭し、軍の忠誠心を維持しないと金正恩体制は崩壊する。米国の攻撃を阻止するには、「核の抑止力」しかないとの認識では、軍人の理解は一致している。

だから、指導者が「核実験終了」を一方的に宣言すれば、追放され暗殺されるかもしれない。金正恩委員長は、極めて難しい状況と選択に直面している。

バナー写真:韓国・ソウル駅で、北朝鮮の金勇進(キム・ヨンジン)副首相(教育担当)=左から2人目=が処刑されたとのテレビニュースを見る男性。テレビの資料映像で、副首相は金正恩委員長(右から2人目)とともに映っている=2016年8月31日(AP/アフロ)