「ハワイに行きたい」と逆さ歌を考案
中田さんは50代の頃、回文作りに熱中し、毎週のように作品を新聞に投稿していた。
「1985年ごろだったか、『変わったことをする女性』を紹介するテレビ番組のコンテストがあって、ハワイ旅行が一等賞だった。『絶対にハワイに行くぞ!』と思って、すごく長い回文を作ってコンテストに参加したの。審査員や観客の反応は良かったのに、結果は落選。出演を決めたのはキックボクサーとか、アイスクリームの早食いチャンピオンとか、いかにもカメラ映えする人たちだった」
読み物としての回文は、インパクトはあるかもしれないがテレビ向きの特技とはいえない。また、中田さんによると、子どもには大好評だが、大人は喜ぶ人とそうでもない人の両極端に分かれるそうだ。
「結果にがっかりして帰ろうとしたら、テレビ局の担当者に呼び止められたの。提出した履歴書に『音楽講師』とあったことが目に留まったらしく、『音楽の先生なら回文と音楽をミックスさせて、逆再生で歌うことはできませんか?』と言われて内心はできっこないと思っていたのに、ついつい笑顔で『はーい、できます』と答えてしまったの」
思いがけない提案からコンテストに再度挑戦することになった中田さん。与えられた時間は3日間。しかし、メロディーを逆さに奏でることは容易だったが、歌の方がうまくいかない。
「童謡の『茶摘み』をやることに決め、どうやったら逆再生で歌って、かつ自然に聞こえるようになるのか、三日三晩考えた。だけど、どうしてもきれいに聞こえない。『ごめんなさい、できません』と謝罪の連絡を入れようと決め、『つかれたー』と声を発したの。その瞬間、『つ』を発した時は『う』が強く聞こえ、『か』を発した時には『あ』が強く聞こえた気がして、もしやと思って、音節だけでなく子音も丁寧に逆発音して逆再生してみたら、見事きれいに聞こえるようになった」
中田さんは、本番のコンテストで一等を勝ち取り、念願のハワイ旅行を楽しんだ。


