問題を難しくしている中国

遠藤 しかし、鳩山政権は、本来的には、日米安全保障協力プラス東アジア共同体を考えなければいけなかった段階で、具体的な準備や段取りも考えず、全く不用意に東アジア共同体論を打ち出してしまった。そういうセンスでやっている限りは、どこにもたどり着けない。

アメリカ自身が中国と戦争をしようという態勢にはないのだから、現在の東アジアでは、日本はアメリカときちんと連携して、中国との間でも敵対的な関係ではない東アジア秩序をつくるイニシアティブをとるべきだ。そうすることで、東アジア全体としての緊張を緩和していくプロセスを踏んでいかないと、沖縄の基地問題は解決できないというのが私の発想方法だ。

それをやっていく条件としては、中国が緊張緩和のプロセスに積極的に関与してくれないといけないが、現在の中国の行動を見ていると、なかなか難しいと感じざるを得ない。

「現状維持勢力」と「現状打破勢力」、米国は中国に対して両にらみ

平良 私もまさに沖縄の基地問題を考えるときの1つのポイントは、中国だと思う。日本が中国の動きをどう評価するのか。中国は果たしていまのアメリカを中心とする国際秩序のなかで行動していくことを考えているのか、それともその秩序を打破しようと考えているのか。ここの見極めが大事だと思う。しかし、ある国家が現状維持をめざしているのか、あるいは現状打破をめざしているのかを評価することは、極めて難しい。東アジア共同体の問題もこの評価と密接にかかわっているので、どう考えればよいのか。

遠藤 私自身は、判断をしばらく留保しながら付き合っていくしかないと思っている。中国にもアメリカにも日本にも多様性がある。それぞれの社会の中に、他国に関する評価に関しても異なる見解がある。アメリカでは、中国を現状維持勢力とみる人々と、現状打破勢力とみる人々がいる。前者の立場の人々は、中国を現状の国際秩序に取り込んで、その中で責任ある大国として迎えることは可能であり、そのために対話を続けるべきだと考えている。後者の立場の人々は、中国はアメリカを中心とした既存の国際秩序を根本的に打破しようとしている以上、対話による対応は不可能であり、ある種の封じ込めが必要だと考えている。両者の力関係は拮抗しており、どちらかが圧倒的に強いというわけではない。また、当面前者の姿勢を維持するが、後者の危険性も考えておかねばならないという立場もある。その意味で、アメリカは中国に関しては、両にらみの姿勢を続けるだろう。

中国の動き見極めにはまだ時間かかる

遠藤 日本では、中国の現状打破的発言がより多く報道されていることもあり、中国を現状打破勢力と見る傾向がアメリカよりも強い。私自身は、中国の力が強力となることによって起こる問題もあるが、内部にある統治上の諸問題のゆえに起こる問題もあると考えている。強すぎる中国も、弱すぎる中国も周辺諸国には大きな問題をもたらす。対外的に大きな力をもった強国としての中国の面ばかり見るのではなく、弱さの部分を読み込んでおく必要もある。それだけ中国の将来を見通すのは難しい。

今の私自身の理解では、習近平政権は共産党周辺の政治勢力の間では権力固めに成功しており、その意味では安定しているかもしれないが、長期的には経済成長の維持が困難になるとともに、現在既に起こっている社会問題への対処が困難となり、共産党の正当性すら問われるようになる可能性がある。実は、共産党自身が将来にわたって統治を維持できるかどうか不安を強く持っていると思う。それに対応して、中国共産党は自らの正当性の根拠としてナショナリズムを利用してきたのだが、それゆえにますます対外的に弱い姿勢を取ることが困難になってきている。こうした背景があるだけに、対外的に強硬な発言が繰り返されることになる。そうなると周辺諸国としては警戒感を強めざるを得なくなる。