ガバナンス・コード:活用めぐり、企業の二極化進む
——2015年6月に適用されたコーポレート・ガバナンス・コードについては、どのように評価されているか。
これを生かすことができる企業と、できない企業の二極化が進むと思う。コーポレート・ガバナンス・コードには答えがないからだ。例えば「独立社外取締役2名」を満たすためにどうすればよいかは、誰が見ても分かる。しかし、これは例外的で、その他の部分には答えがない。例えば、取締役会の評価、経営陣幹部の選任や取締役・監査役の指名、報酬を説明する部分には答えがない。だからガバナンス・コードへの対応といっても、コード以前に、それらの事柄を真剣に議論してきた企業でなければ難しいだろう。その経験があれば、そのエッセンスを抽出して、コーポレート・ガバナンス報告書のフォーマットにそれを書けば良いが、経験がない企業はそれができない。
例えばオムロンの事例がある。山田義仁社長が2011年に指名された経過を、年次報告書で物語形式で書いている。どうようにして彼が選ばれたかを臨場感豊かに説明している。このような説明は株主だけでなく、社員に対してもいい作用をもたらすと思う。
このような経験があると、ガバナンス・コードの報告書の作成は、自社の固有の経験をもとに考え方を整理して、アウトプットする作業になる。しかし、これまで社内でまともに議論したことなく、「(経営幹部の)指名や報酬の決め方は社長の頭の中にしかない」という企業は形式的な対応しかできないのではないか。
私がコーポレート・ガバナンス・コードで重要だと考えるのは「経営幹部の報酬の決め方」、「経営幹部の選任方法」、「取締役会の評価」という3点。日本の経営者の報酬は、欧米に比べて額は少ないが、総額の中の固定報酬の割合が多いことが問題だ。やってもやらなくても報酬はあまり変わらないのなら、経営を変革しようとするインセンティブが効かなくなる。
取締役会は“社内の利害調整の場”にあらず
多くの人にとって、「取締役会の評価」は初めて聞く言葉だろう。イメージしにくいが、ガバナンスの中心は社外取締役なので、当の社外取締役に取締役会が機能しているかを率直に尋ねるのが、評価の第一歩になるのではないか。例えば、三菱UFJフィナンシャル・グループは2015年6月に指名委員会等設置会社に移行したが、社外取締役の川本裕子氏は年次報告書で「同社の取締役会がどう変わったか」について語っている。また、みずほフィナンシャルグループの2015年の統合報告書では、社外取締役であり取締役会議長の大田弘子氏が取締役会の変化を述べている。このようにフィードバックを集めて、それを改善につなげることが取締役会を評価する目的ではないか。
——取締役会の今後のあり方について、日本の多くの企業はまだ暗中模索の段階にあるのではないか。
そうだと思う。しかしそれは、何も日本企業に限ったことではない。グローバルなガバナンス議論は環境の変化とともに常に変化している。それによって、取締役会のあり方は変わる。日本企業に対しては、ISSは現在、最低1人の社外取締役を求めている。その条件を満たさない企業には、社長や会長のようなトップへの反対を投資家に推奨している。
取締役会が内部の人間だけだと、取締役会は社内の部門間の利害調整を行う場になる恐れがある。そこに外部の取締役が入って、例えば取締役会の回数をこれまでの半分に減らすとする。すると決める事柄が変わって、部門間の利害調整を超えて、高次の戦略的課題を扱うようになる。そうなれば外部の知見も必要になるだろうし、社外取締役が活躍できる場となり、社内の取締役のマインドセットも変わるだろう。
社外取締役は1人よりは2人の方がいい。なぜなら社外取締役同士で話し合いができるからだ。また、あくまで参考だが、世界の相場は少なくとも「社外取締役はメンバーの3分の1」だ。日本の取締役会は大体9人前後の規模が多く、であれば2人が実現すれば3人、つまり3分の1も日本の現実からは、あまり違和感はないのではないか。

