「蜜月期」はいつまで続くか

林鄭長官のソフト路線を、民主派の老舗政党は歓迎する。7月5日、就任後初めて立法会に出席した林鄭長官を、民主派の一部は起立して迎えた。目玉政策である、正規雇用の教師の増員や奨学金の新設などの新しい教育政策案は、民主派が抵抗を控えて可決された。市民の間での林鄭長官の支持率も高く、現状は新政権誕生後の「蜜月期」となっている。

こうなると、街頭での抗議活動を主としてきた急進派はやりづらい。政治化には市民も疲れており、当面は経済や市民生活に関する政策に政府が集中してほしいというのが香港社会の多数派の民意である。7月1日には恒例の民主派によるデモが行われたが、参加者数は主催者側発表6万人と去年の半分以下、警察発表の1万4500人は、2003年以降で最少であった。独立への支持も減退している。香港中文大学の16年7月の調査では、15~24歳の若者の39.2%が独立を支持するとの結果が出て香港社会に衝撃を与えたが、今年6月の同調査では14.8%に急減している。独立派が弾圧を受けて勢力を失っていることや、それに対して打つ手のない独立派の無策などが原因と考えられる。

問題は、蜜月期がいつまで続くかである。梁前長官が「独立派」の議員資格取り消しを求めた裁判の上訴審、大陸と香港の高速鉄道の問題など、論争性の高い問題は次々と降りかかっている。格差問題や住宅難などには出口が見えない。そして、任期の5年の間に、処理を先送りにしている爆弾——国家安全条例と愛国教育という、習主席の宿題に手を付けることを求められる。新長官は「賞味期限」内に、難題処理に取り掛かれるだけの「雰囲気作り」に成功するか。

気になるのは、若者の中国離れが続いていることである。6月の香港大学の調査によれば、18~29歳の若者のうち、自分を「香港人」と述べた者は65.0%、「中国人」は3.1%と返還後最低となった。表面的な静けさの下に、大きなうねりを隠した海へと、林鄭長官は船出したのである。

バナー写真=1日、香港で、習近平国家主席(右)を前に就任宣誓する林鄭月娥行政長官、2017年7月1日、中国香港(時事)