「東台湾海」という考え方

原住民がアワを特別な農作物として大切に扱っている台湾と、毎年夏に五穀を供える八重山との間に、どのようなつながりを見いだすべきなのか。

「東台湾海」という考え方がある。台湾にある中央研究院民族学研究所の黄智慧氏が提唱しているもので、原住民が多く暮らす台湾の東海岸や、南西諸島の八重山地方や宮古地方、ルソン海峡以北のバタン諸島やバブヤン諸島を包含するエリアで「島際関係論」を深めようというコンセプトである。国「際」ならぬ島「際」だ。今回取材したアワや五穀も、もちろん黄氏の視野に入っている。

アワをつく手際を競うゲームを前に、アワ束がざるに入れて用意された、台湾・台東県太麻里郷、2017年(撮影:松田 良孝)
ルパカジ地区の収穫祭には、アワを脱穀する手際を競う「搗篩小米」という伝統競技もあった。臼ときねで搗(つ)いたアワをざるに広げ、揺り動かしたり、強く息を吹きかけたりしながら殻とえり分けていく。八重山の豊年祭でも穀物の栽培や収穫を題材にした踊りが数多く登場する。台湾と八重山に共通する豊年祭の背後にあるものも「東台湾海」という呼び名を与えることによって初めて見えてくるのかもしれない。

参考文献

  • 『収穫祭』黄国恩、国立台湾史前文化博物館、2004年
  • 『台湾原住民社会の地方化―マイノリティの20世紀』松岡格、2012年
  • 「環「東台湾海」文化圏における島際関係史―与那国島を中心に―」黄智慧、2007年
バナー写真=収穫祭で踊るパイワン族の若者たち、台湾・台東県太麻里郷、2017年(撮影:松田 良孝)