司馬遼太郎も注目した台湾青年
台湾に関心を持つ日本人の間でよく読まれている司馬遼太郎『街道をゆく 40 台湾紀行』(朝日新聞社、1994年)は、日台関係を考えるうえで話題に上るさまざまな人物に言及しているが、葉盛吉についても一章を割いて紹介している。植民地だった台湾出身者としてアイデンティティーの揺らぎに苦悩し、戦後の白色テロで命を奪われた若き知識人の生きざまは、司馬にも強い印象を残したようだ。
司馬が種本にしたのが、楊威理『ある台湾知識人の悲劇──中国と日本のはざまで 葉盛吉伝』(岩波書店、1993年)である。著者の楊は葉盛吉の親友だが、後に大陸へ渡り、文化大革命の苦難を生き残るなど数奇な生涯を送った人である。その経緯については、楊の自伝『豚と対話ができたころ──文革から天安門事件へ』(岩波書店、1994年)に詳しい。『ある台湾知識人の悲劇』は台湾でも、『雙郷記』(人間出版社、1995年)というタイトルで中国語版が刊行されている。訳者の陳映眞は投獄経験もある著名な作家で、2006年に中国へ渡るなど論争的な人物でもあった。
