アニメから日本への好感へ

月刊誌『Frontier』編集者の邱小良氏は「なぜACGで日本なのか」という報告者の質問に「台湾では日本のACGは小さいころから当たり前に接していて、自然というしかない。ACGは一種の言語表現方法だが、見ているうちにキャラクターと生活習慣に親しみを持ち、それが日本への好感にもつながっている」と述べている。

台湾のFFなどのACGイベントにおいては、参加者はACGへの愛着から日本への好感につながっていることが、これまでのインタビューなどから分かった。さらに有名政治家が顔を見せることで、メディアの注目度も上がり、さらに参加者やアニメ全体への関心も喚起している。

だが一方では、限界もある。FFにも度々出展する出版社を経営し、日本のアニメや漫画にも造詣が深い劉定綱氏は、台湾におけるACGイベントやACGファンも、絶対数としては小さい、と指摘する。コンサートの動員などにおいても、BIGBANGのような韓国のポップ歌手の方が数万人単位で回数も多いが、対する日本のアニメ声優のライブは数千人規模であるという点である。

もっとも、劉氏の指摘によれば、「台湾の日本ACGファンは規模では小さいながら、その忠誠度合いや声の大きさから、大きなエネルギーを生み出し、影響力が大きい。それが日本大衆文化、ひいては日本社会への関心や好感へけん引する原動力になっていることは否定できない」という。

中間層の憧れの的

では、なぜここまでアニメが台湾の若者の心を捉えるのか。

それはひとえに中産階級や中間層が基盤になった文化があるからだと考えられる。

長引く不況でやや基盤が崩れつつあるとはいえ、日本は依然として分厚い中間層に支えられている社会である。今のアニメは、さまざまな社会問題を描いたシリアスなものもあるが、一大ジャンルとして確立しているのは、「萌(も)え日常系」と呼ばれ、主人公がのほほんとしてほんわかした癒やされるものが多い。そして、アニメの登場人物は、所得階層としては中の上あたりの若者が多い。これは米国や韓国のドラマが極めて裕福な階層を描いているものが目につくのとは対照的だ。

そしてアジアの優等生・台湾も、中間層が主体である。さらに、中間層が増えつつある東南アジアのインドネシアやマレーシアなどでも、やはりアニメ好きの若者が増えている。

アニメの登場人物は、日本社会の中では比較的豊かそうだ。だが、米国や韓国ドラマに出てくる大金持ちと違って、中の上というのは、今のアジアの人々にとって手が届かないものではなく、そうした達成可能な目標である。

何よりも今のアジアの中間層の若者にとっては、日本は「安全で安心な社会」だと受け止められている。日本の高度経済成長は終わった。だがその分、文化や観光地としての魅力は高まっている。何よりも都市部でも空気は澄んでおり、水や食材も安心して飲食できるし、治安も良い。清潔・安全・安心がそろった場所はアジアではそう多くはないのだ。

アニメでは、そうした日本の何気ない、美しい風景が描かれていることが多い。それがまた台湾などアジアの若者の憧れを引き出しているように思われる。

バナー写真=Fancy Frontierの様子、2017年7月29日、台湾台北(撮影:酒井 亨)