さらに広がるアベノミクス

その後、アベノミクスの政策範囲はさらに拡大した。安倍内閣は、2016年6月に「ニッポン一億総活躍プラン」を決定し、その中で「新たな三本の矢」を打ち出した。

新たな三本の矢の第1は、「希望を生み出す強い経済」であり、名目GDPを600兆円にするという目標を掲げている。第2は、「夢を紡ぐ子育て支援」であり、その具体目標が「希望出生率1.8」の実現である。そして第3が、「安心につながる社会保障」であり、その具体目標が「介護離職ゼロ」の実現である。

更に政府は、横断的課題として「働き方改革」に力を入れて取り組みつつある。その柱は、「同一度労働同一賃金」の実現と長時間労働の是正だった。2017年3月には「働き方改革の実行計画」が決まった。この計画では、労使の合意や特別条項であっても例外を認めない労働時間の上限を設けることとし、同一労働同一賃金についても、賃金だけでなく、賞与、福利厚生も含めて正社員と非正規社員との間に不合理な待遇差を設けないこととされた。

残された課題 財政と社会保障の改革

こうして安倍政権下の経済政策が進められてきたが、残された課題は多い。成長戦略による日本経済の成長力の強化、少子化への対応、世界における自由貿易の推進などがそれである。

中でも大きな課題として残されたのが財政・社会保障改革である。日本の財政バランスが危機的なレベルにまで悪化していることは多くの人が知っている。多くの経済学者は、これを放置していると、何らかの経済的大混乱になり、その段階で国民福祉が大きく損なわれると懸念している。いわゆる「財政破綻」である。しかしアベノミクスの中で、財政再建は先送りされてきた。2015年10月に予定されていた消費税率の10%への引き上げは、2014年11月、16年6月と2度にわたって延期され、さらに、消費税率の引き上げで得られた財源を大幅に子育て、幼児教育支援のために振り向けることになった。財政再建は遠のくばかりである。

政府は、2018年度骨太方針(2018年6月)で、「2025年度のプライマリバランス黒字化」と「債務残高対GDP比の安定的な引き下げ」という財政政権の目標を掲げている。しかし、内閣府の中長期試算によると、高めの成長率を前提とした場合でも、2025年度にはGDP比0.5%(3.8兆円)程度のプライマリバランス赤字が残るとされており、財政再建への道は厳しい。

財政の今後を考える時、社会保障改革が急務となる。手をこまねいていると、高齢化の進行とともに、医療、介護、年金などの社会保障関係費が自然に膨張してくる。社会保障を改革して歳出の合理化を図るべきだが、国民の反発を恐れて政治家はなかなか手を付けられない状況だ。7年目に入った安倍政権は、依然として多くの課題に直面していると言える。

バナー写真:日本銀行の黒田東彦総裁(左)と握手する安倍晋三首相=2018年4月9日、首相官邸(時事)