弁証法的発展の発想なき中国の指導者
今の中国政治指導者には共産主義者がよく用いていた弁証法的発展という考え方が身についていないようだ。ただ圧倒的に強い力関係にあるとき、単純に強行政策をとって力ずくで自らの意思を相手に押し付けるのはいかがなものか。弁証法的発展とは、自分たちの意思や行動に対する反作用の効能もよく計算に入れながら、その先に生まれる新しい関係性を戦略的に考える、いわゆる正→反→合という考え方である。
「一国二制度」をどのようにして香港住民も納得できる制度にすることができるのか。これを香港市民や当局者などを巻き込んで本格的に討議するならば、「弁証法的発展」の成果が出てくるかもしれない。
今回の米中の対立はそもそもそれほどイデオロギー性の強いものではなく、超大国の座を目指すイニシアティブの争いと言えるものでもある。したがってイデオロギー、政治・経済体制、陣営などで争った「米ソ冷戦」とは異なる面が多い。イニシアティブの調整さえうまくできれば、――難しいことではあるが――、米中共存は可能である。そしてその道を探ることと香港「一国二制度」の再生は連動しているのである。
バナー写真:国家安全維持法案が可決した当日、朝の香港風景。( © Chan Long Hei/SOPA Images via ZUMA Wire/共同通信イメージズ)