漢方を楽しむカフェ

「新興糊紙店」を後にして、近所のとあるカフェに向かった。

「元益與寶來」というお店だが、見た目からして普通のカフェではない。足を踏み入れた途端に、八角やシナモンなど漢方薬の匂いが鼻をくすぐる。わたしの実家もかつて漢方薬局だったので何とも郷愁をさそわれる薫りに、コーヒーの香ばしさが入り混じる。ここは台湾で初めての「漢方薬カフェ」なのだ。

「元益與寶來」の店内。漢方薬とコーヒーの香ばしさが入り混じる(筆者撮影)
「元益與寶來」の店内。漢方薬とコーヒーの香ばしさが入り混じる(筆者撮影)

なにやら不思議なこのお店を経営しているのは張修豪、張惠雯、張博勛の3兄妹。末っ子の博勛さんは大学時代からコーヒーの焙煎を学んでいた。日本留学を経てコーヒーと漢方薬の融合を思い付いた。そこで兄妹で話し合い、父母が30年ほど経営するこの漢方薬局の中にカフェを開くことを決めたという。こだわりのコーヒー豆が入ったガラス容器と、漢方薬の昔ながらの容器がカウンターに所せましと並んでいる。丁子や花椒、八角をブレンドしたコーヒーも飲めるし、漢方薬なしのコーヒーもある。スイーツも漢方薬を使ったお店のオリジナルで、店の奥には大量の生薬(粉などにする前の漢方薬)が積まれており、体調を相談すればオリジナルの漢方薬の調合もしてもらえるという。

ああ、ここにも文化を大胆に跨っている人たちがいる。

紙工芸に、漢方薬。新荘の旧道には、伝統文化にあたらしい「道路」を切り拓く、文化の越境者たちが微笑んでいる。

バナー写真=新荘の旧歩道歩きの参考にした金子常光画「新荘郡大観」の一部(『台湾鳥瞰図』、荘永明、遠流出版公司)