「赤」がもつ二面性

赤い色が悪いものを遠ざける呪力を持つと昔から考えられてきた点は、日本も同じだ。台湾ほどではないが、今も年中行事や食べ物の中にその思想を反映したものがある。

お祝いの膳に欠かせない赤飯がその一例だ。その原型は小豆を入れた粥(かゆ)で、平安時代の宮中では邪気を払うために正月15日に食べる習慣があった。10世紀の書物『土佐日記』や『枕草子』にも言及されている。当時は赤米という、赤みを帯びた米が一般的だった。時は下って江戸時代、麻疹(はしか)が大流行した年に描かれた「麻疹送出しの図」にも、人々が赤い鏡餅を麻疹の神に供え、棒で担いで送り出す様子が描かれている。

「麻疹送出しの図」(東京都立中央図書館特別文庫室所蔵)
「麻疹送出しの図」(東京都立中央図書館特別文庫室所蔵)

興味深いのは、日本において、赤は「鬼」の典型的な肌の色でもあることだ。「桃太郎」の絵本などでもおなじみだろう。他にも青鬼、黄鬼、緑鬼、黒鬼などがおり、これらはそれぞれ仏教思想における煩悩を象徴しているとするのが定説だ。赤は欲望、青は憎悪、黄色は執着、緑は怠惰、黒は疑いを表す。

日本の節分(立春の前日)の豆まきも魔除けの儀式だ。子どもの頃は「鬼は外、福は内!」と豆をまき、後日、部屋の隅に落ちている豆を見付けては、ほこりを払って食べるがひそかな楽しみだった。

豆まきの起源も古い。15世紀に書かれた瑞渓周鳳という僧の日記『臥雲日件録』にも「家毎散敖豆、因唱鬼外福内」という記載がある。日本人には大変なじみ深い風習だが、鬼すなわち煩悩と考えると、これは自らの心を浄化させるための儀式だとも解釈できるだろう。