ジブリの協力を条件に長編アニメーションに初挑戦

9月に公開される『レッドタートル ある島の物語』のマイケル・デュドク・ドゥ・ヴィット監督はオランダ生まれで、イギリスをベースに活動するアニメーション監督。短編『岸辺のふたり』(2000年)が米アカデミー賞短編アニメーション映画賞を受賞している。同作品に魅せられた鈴木氏が、マイケル監督に長編を作ってみないかと直接打診をしたのは10年前だと言う。

「彼は、自分は8分~10分の作品しか作ったことがないので、ジブリの協力が得られるなら長編を作ってみたいと答えた。それを聞いて、高畑さんに協力してくれますかと聞いたらふたつ返事で了承してくれました」

「当初はシナリオ作りの段階で、イギリスと日本でやり取りをしていたが、なかなか作業が進まない。それで、(マイケル監督に)日本に来ないかと提案しました。8年くらい前ですが、彼は1カ月間、アパートを借りてそこからジブリに通い、高畑さんと相談しながら作業をして、(シナリオ、絵コンテなどの)大体の目処をつけた」

製作費をどうやって確保するかも検討課題だったが、フランスの製作兼配給会社・ワイルドバンチと共同製作することが決まり、アニメーション製作の実作業はフランスを中心に進められた。

これからはボーダレスな映画作りが面白くなる

『レッドタートル ある島の物語』はオランダの監督、ヨーロッパ各国出身のスタッフで製作された。これからは「ヨーロッパだけじゃなく、アメリカ、アジアやアフリカから人が集まって1本作ればいい。もうそういう時代になっている」と鈴木氏は言う。

「いろいろな国の人が集まって1本の映画をつくる時代が来た」

すでに、現在の日本のアニメの6、7割が東南アジアで製作されており、米国のアニメ業界も同様な状況になっているそうだ。「日本のプロデューサーや監督が向こう(東南アジア)へ行って一緒に作る時代が来ているのではないか」

「日本、これからのアジアは中国語、タイ語など、いろいろな言葉を覚えていかないと仕事がうまくできなくなる時代になると思う。作品のテイストも変わるだろうが、それが面白い。そこから何が生まれるのか。ボーダレス時代は面白いことになるなと考えています」

アニメーション製作の世界が手描きからデジタルへ、ボーダレスへと大きな変化の時を迎えた今、宣伝も新聞、テレビ、雑誌や企業とのタイアップからネット、SNSを駆使した戦略が主流となりつつある。「もう僕の手に負えない」と鈴木氏は潔く認める。今、何かと頼もしく思っている存在は、ジブリに「弟子入り」したこともあるIT企業ドワンゴの川上量生(のぶお)会長だそうだ。「(アニメを)作る方だけでなく、それをどうやって世の中に送り出すかもデジタル化している。いよいよ僕の時代じゃないな」

一つの時代が終わったのは確かだが、当面、「アナログ世代」のジブリファンとしては、この夏東京で開催される「ジブリ大博覧会」でそれぞれの作品と出会った頃に思いを馳せたい。

(2016年6月13日のインタビューに基づき構成)

取材・文=板倉 君枝(ニッポンドットコム編集部) 撮影=大河内 禎

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