「仲が良すぎる」家族
カナダでの生活で椋さんが少し気掛かりなのは、「家族問題」だ。「彼の家族は仲が良すぎる」。新居はコーリーさんの両親の家から歩いて10分程度。毎日でも親や妹、弟と会いたいという彼に対して、微妙な心境のようだ。
コーリーさんの27歳の妹は椋さんより1カ月前に男の子を出産。妊娠中でイライラしていたのか、椋さんに対してとげとげしかった。ただ、今後はお互いに幼い息子を育てる母親として良き相談相手にもなるはずだ。もう1人の妹は椋さんと同じ24歳。妹2人ともっと仲良くなれば椋さんのトロントでの生活の最強の味方になると、コーリーさんは期待している。
椋さんは4月にカナダで永住権を申請した。大勢の人が申請しているので、受理されるまでに1年以上かかると言われている。永住権を取得するまでは、トロントで就職することはできない。
「お義母さんからはちゃんと働きなさいと言われている。でも、美容師をするにはオンタリオ州の試験を通らなくてはならないし…」
もちろん、コーリーさんの両親が30年間営んでいるカフェベーカリーを手伝う選択肢もある。コーリーさんと妹、弟たちも小さい時からカフェで働いた。ただ、「僕の両親は仕事では容赦ないボスだよ」とコーリーさん。だから、椋さんはカフェで働かない方がいいかもしれないと思っている。「リョウが美容師の試験を受けるなら、僕も勉強をサポートするし、仕事を探すなら、カフェや美容師以外にも選択肢はあると思う」
息子には多くの選択肢を
息子の大輔君の名前は元メジャーリーガーの松坂大輔にちなむ。プロコピオ一家にとって、野球はとても重要だ。コーリーさんはリトルリーグからずっと野球を続け、大学も野球の奨学金での入学だったが、負傷で野球を断念。18歳の弟は、ニューヨーク・メッツにドラフト指名されたほどの実力の持ち主だ。
もちろん、息子もリトルリーグに入れたい。とはいうものの、大輔君を育てるときはできるだけ多くの選択肢を与えたいそうだ。「僕自身、もっと日本語を勉強しておけばと悔やんでいるから、大チャンはバイリンガルに育てたいし、日本の文化についてもっと学んでほしい。野球はもちろん一緒にやりたいけれど、サッカーもいいし、ピアノとか音楽もやってほしい。自分で何が好きか分かったら、やりたいことをすればいい」
カナダでは二重国籍が承認されているが、日本の法律の下では、22歳までにどちらかを選ばなくてはならない。大輔君はそれまでに、日本に住みたいかカナダに住みたいか、自分で選べばいいとコーリーさんは言う。「大チャンが幸せなら、どちらでも構わないさ」
取材・文=ニッポンドットコム編集部撮影=山田 愼二

