ビッグデータはおせっかいな友達役

アマゾンなどのネット通販には、「この商品を買った人はこんな商品も見ています」というリコメンド機能があり、それに似た仕組みとも言えるが、人間の交際というのは双方の気持ちが合わないと成立しない。だからこそ、検索条件とは合わないものの「好みかもしれない」だけではなく、「好まれるかもしれない異性」を探し出してくれる点が強みとなる。お見合いを申し込んで失敗すればするほど、その人の好みがデータとして蓄積され、より多くの異性が「お薦め」される仕組みだ。

「民間の結婚相談所は、利用者の条件にあったより良い人を探すというのが主な使命だと思います。それで評判を上げて、利益を上げるわけですよね。われわれのビッグデータの活用の意義は、条件と合わない人とどう結びつけるか、という点。そこが民間との最大の違いです。『あの人たちはどう? あなたの条件と違うところはあるけど、もしかしてタイプなのでは?』と、ビッグデータがおせっかいな友達の役割を担ってくれるのです」(岩丸さん)

なぜ、条件と合わない人とわざわざ結びつけるのか。実はこの考え方も、ビッグデータの解析で分かった事実から導き出されたものだ。

センターの結婚支援は、ビッグデータ活用が導入される前も一定の成果があった。しかし、結婚支援に税金を投入することへ批判の声もあり、さらなる努力が求められていた。実際、登録者の中には3年間お見合いを申し込み続けたが、一度も受けてもらえない男性など、「婚活疲れ」を起こしてあきらめかけている登録者も多くいたという。

「条件検索」には明らかな弱点

お見合いを申し込んで受けてもらえる確率は、ビッグデータ活用前で男性が6%、女性は13%と低かった。ただ、お見合いをした男女のほぼ半数は交際に発展していた。お見合いまで行くと、腕利きのボランティアサポーターが2人の間を取り持つという強みもあった。

「つまり、いかにお見合いまでたどり着けるかが鍵だったのです。失敗を続ける人たちはどうしてお見合いに至らないのか、データの分析によって答えやヒントを得ることができれば、成婚率が上がるのではないか。また、婚活に疲れた人たちに再チャレンジする意欲を持ってもらえるのではないかと考えました」(岩丸さん)

お見合いに至った男女をサポートする経験豊富なボランティア=えひめ結婚支援センター提供

「アルゴリズム」研究の専門家である国立情報学研究所の宇野毅明教授に、利用者の個人情報を除いた上で行動データ分析を依頼したところ、お見合いにたどりつけない男女にはある致命的な「特徴」が判明した。何度失敗しても、相手の検索条件を変えない、という事実だった。

異性の好みは誰にでもあるし、結婚相手の条件にこだわるのも悪いことではない。ただ、条件検索には明らかな弱点がある。

気づきと余裕を与えたビッグデータ

条件を20歳代に限定すると、「20代に見える30代ならOK」などという希望は反映されないし、酒やたばこの嗜好でも、基本は「可」か「不可」か「気にしないか」の3択で、「家で吸わなければ許せる」などの細かいニーズは拾いきれない。そもそも、既婚者でも条件を設定すれば、いまのパートナーと合わない点は一つや二つあるはずだ。「相手に好意を抱く」という最も大事な要素の前に、条件が立ちふさがってしまっているようにも映る。

「ちょっと目先を変えれば可能性が広がるのに、なぜかそれができないのです。さらに、年齢が35歳を超えると、そもそものお相手の対象人数が減っているにもかかわらず、『持ち家があるか』や『義理の親の状況』など、相手に課す条件がどんどん厳しくなるという負のスパイラルに陥っていることも分かりました」

「そこで試験運用の際、20代の女性にこだわりつづけて一度もお見合いできていなかった40歳の男性に使ってもらったのですが、ビッグデータが『お薦め』したのは男性よりちょっと年上の女性でした。ところが男性は『ぜひ会いたい』とすぐに気に入ったのです。ほかにもそうした成功例が続き、このシステムは活用する価値があると自信がつきました。同じ条件に固執していた人に、ビッグデータが『気づき』を与える効果があったのです」(岩丸さん)

お見合いを申し込んで成功する確率は、男女平均で29%まで上昇した。ビッグデータがお薦めした異性への申し込みに限れば「40%近い数字が出ている」という。

別の効果もあった。お見合いを申し込む件数は、女性は男性の2割程度にとどまっていたが、ビッグデータ活用後は数字が上がった。女性からは「気楽に申し込めた」との声が目立つという。失敗して傷つきたくない、という女性の心理に「自分が選んだわけじゃないから」という余裕を与えてくれたのだ。