省エネ進展には大きな期待
従来との大きな変化はむしろ、総エネルギー消費の見込みを(経済成長への期待にもかかわらず)小さく計算したことである。つまり省エネが大いに進展し、経済成長とエネルギー消費の増加との関係が弱くなっていく、という想定である。
GDP成長率に対するエネルギー消費増加率の弾性値は長らく1.0であったところ、2030年に向けては0.01を想定しているとの計算になる。ちなみに、震災後のここ数年の弾性値は、海外市場での燃料価格上昇に加えて円安による輸入品価格の上昇があって、省エネが進んだためにマイナス(経済成長しても電力消費量は減少)であるので、「このような大きな変化が中期的にも続くし、政策的にも続かせよう」というのが含意であるように思われる。
経済界では、「経済成長は成功せず、したがって省エネがそれほど進まずとも、ちょうど予想された総エネルギー消費量になるのではないか」との声もある。しかし、省エネ市場の発展が経済成長実現の鍵になってくるとも言えよう。例えば、エコビル、エコハウスや飛躍的に低燃費の自動車の普及、これらを組み合わせた都市改造などの大きな省エネビジネスのチャンスがあろう。
海外削減量は算入せず
2020年目標や京都議定書目標との違いは、もう一つある。それは今回の2030年目標は、海外削減量を算入していないことである。報道によれば、この背景には、産業界が、京都議定書時代にクリーン・ディベロップメント・メカニズム(CDM)を通じて中国などから多量の削減クレジットを義務的に購入しなければならなかったところ、このような事態の再来を避けたいと主張したからであるとされている。
今回の削減目標策定の過程から見た、日本の取り組みの特色は、以下のように整理できる。
気候変動枠組条約(1992年採択)の交渉時点から、日本国内の検討過程では際立った特色となっていたのは「経済が先にありき」の発想である。経済的な負担が受容可能な範囲の対策に留めるとの姿勢は、今回も基本的に引き継がれた。例えば、今回は、電力価格が重視され、将来の排出量削減見込みは相変わらず業界別に積み上げて計算されるなど、産業構造を積極的に環境保全型のものに変更するまでの気概は示されなかった。
こうした経済優先の姿勢には、多少の変化も見られた。それは省エネについての相当大きな期待である。省エネが結果的に日本経済の環境保全型への移行に当たっての大きな起爆力になる可能性がある。
国際社会をけん引することに向けた意欲は、京都議定書交渉の頃と比較すると減退したままである。京都議定書の経験から、産業界は国外削減が義務となることを嫌っている。しかしながら在外資産、海外投資額、技術開発力といった観点での日本の力が実際になくなってしまったわけではなく、経済的な地位と、地球環境保全のために担う役割との間にはギャップが生じている。日本がこのギャップを埋めるモチベーションに目覚めた時には事態は大きく変化する可能性がある。