観客動員数増も、「発展」の道は見通せず
しかし、この状態を「日本プロ野球の発展」と言えるかどうかは、大いに疑問のあるところだ。そもそも「日本プロ野球の発展」とは、どういう状態を指すのか? その疑問に答えられる球界関係者は(コミッショナーやオーナーのなかに)存在するのか?
私がプロ野球の取材を開始した1974年、MLB(アメリカ・メジャーリーグ)は、ナショナル・リーグとアメリカン・リーグ各12球団合計24球団が、6球団ずつ東西に分かれてペナントレースとワールド・シリーズを争っていた。それが現在ではチーム数が6球団増え、合計30球団が東、中、西の3地区に分かれて戦うようになった。

一方、日本のプロ野球は第二次大戦後直後の混乱期に少々球団数の増加を見たとはいえ、1958(昭和33)年以来60年近くもの間、セ・パ各6球団、合計12球団の体制が続いている。
同じ時代までMLBをさかのぼるなら、当時はナ・ア各リーグ8球団、合計16球団。そこから球団数はほぼ倍増した。メジャー球団は国外(カナダ)にも誕生し、マイナーリーグは中南米にも進出。選手は中南米以外にも、ヨーロッパやアジアからも集まるようにもなった。
このようなアメリカ野球の変化を「発展」と呼ぶなら、日本のプロ野球の状態は「停滞」と言うべきだろう。いくら観客動員数が増えたと言っても――昭和33年にはセが約530万人、パが約360万人。合計約900万人が、現在は約2300万人で、過去は相当の水増し発表をしていたことを考えると、観客は4倍以上に増えたと言える――、最近10年の頭打ち状態を考えると、これ以上の観客増は望めそうにない。
日本のプロ野球は「親会社の所有物」
しかし、それ以上に問題なのは、日本のプロ野球関係者が(MLBのような)「発展」を考えているかどうか……という点だ。
MLBはベースボールをビジネスと考え、ベースボールを世界中に「発展」させることによって、利益を拡大することを目指している。だが、日本のプロ野球は親会社の所有物として、親会社企業の宣伝、イメージ戦略、販売促進に利用されている。従って、例えば韓国、台湾、中国、オーストラリアへと日本のプロ野球が「発展」する必要が(今のところ)認められず、ましてや現在のプロ野球組織を創設し、リーダーシップを取り続けてきた企業が読売新聞社グループというマスコミ企業であるだけに、日本語以外の地域へのプロ野球の「発展」は不要なこととしか考えられない。
さらに読売新聞に加えて、高校野球は朝日新聞、社会人野球は毎日新聞と、マスコミ企業が日本の野球界のすべてを支配してきた結果、自社の利益を追求するあまり、日本の野球はどうあるべきか、といった意見を展開するスポーツ・ジャーナリズムが存在せず、日本のプロ野球は(高校野球や社会人野球も)親会社(や学校)の利益のために利用されるだけの存在であり続けた。
その結果、優秀な選手の多くがMLBに奪われるという事態に陥っている。とはいえ、今シーズンもパ・リーグはリーグ新記録の観客動員数を記録し、セ・リーグも観客動員数が実数で発表されるようになった05年以降で最多となる観客数を記録した。
しかし、これほど盛況を極めるプロ野球を、将来どのように「発展」させようか……という声は聞こえてこない。ならば2004年の「大騒動」と「改革」とは、いったい何だったのか?
日本野球は本来どうあるべきか……。どう「改革」するべきか……。
それは、マスコミ企業(マスメディア)が野球という事業から手を引き、ジャーナリズムに徹するようになって、初めて誰の目にも見えてくることかもしれない。
バナー写真:日本シリーズを制し、スタンドに向かってポーズを取るソフトバンクナイン=2015年10月29日、神宮球場(時事)