社会と遊離した日本の政党
政党の社会からの遊離は、与野党に共通している。自民党の地方コミュニティ、利益グループとの結び付きもまた、富の再配分の縮小と市町村合併に伴う地方政治家の大幅な減少によって弱まった。ただ、相対的に言えば、同党はずっと強固な地方ネットワークを維持している。とりわけ、農村部ではそうである。一方、都市部では、連立相手の公明党の固い地盤が自民党に強みをもたらしている。最近の選挙のように投票率が低い場合、自民党のこうした組織面での強みを野党が克服するのは難しいだろう。
来たる総選挙でも恐らく、同じような力が働くだろう。前原氏が民進党の解党を発表した際、地方の支部と党員が相談を受けることはなかった。多くの人々は今や不満を抱き、どの候補を支持すべきかで割れている。
希望の党については、都民ファーストの会の幹部2人が離反し、小池氏が握っていた東京の支持基盤は早くも不安定化の兆しがある。民主党/民進党の組織・財政面の最大支持組織である連合(日本労働組合総連合会)でさえ、党の解散についてはほとんどなすすべがなかった。割って出た中道左派について、連合もまた内部に意見対立を抱えている。
これらはすべて、野党が事実上、政治家が選挙目当てに立ち上げては捨てる「いつでも乗り換え可能な船」となっていることを示している。それらの政党はボトムアップによってつくられたり、コントロールされたりしておらず、そのために社会全体のさまざまな利益を代表したり、一つにまとめたりする能力が弱い。そうした政党は社会から自らを切り離している。もはや社会に足場を持たず、政党理論家のピーター・メアが言うところの「代表機能の忠実性(representational integrity)」を欠いているのだ。
浮動票とポピュリスト戦略
一方、有権者の方も政党から距離を置くようになっている。支持政党なしの日本の有権者は、1980年代に比べてほぼ2倍に増えた。世論調査機関によって差はあるものの、浮動票の割合は50%から70%の間を動いている。それと同時に、国際的に見れば既に低いレベルにある党員や後援会員も着実に落ち込んでいる。
日本の政党の社会との結び付きの弱さは、今回の選挙で立憲民主党のツイッター・フォロワー数が結党から1週間のうちに自民党のそれを上回ったというニュースによく表れている。10月10日現在で、立憲民主党のフォロワーは16万2000人に達した。だが、この数字は実は、橋下氏(190万人)、安倍氏(75万人)、小池氏(48万人)といった政治家個人のフォロワーにはるかに及ばない。そして、ツイッター・フォロワーが活動的な党員や地方政治家、利益グループによる支持の代わりにならないのは明らかだ。
政党はそこで、無関心な有権者の足を投票所に運ばせるため、党のリーダーのカリスマや資質に焦点を合わせたメディア・アピールと、頭ではなく情動に訴えるシングル・イシュー選挙キャンペーンの組み合わせによって、浮動票を獲得しようとしている。こうした戦略は、過去10年の間に小泉純一郎氏と橋下徹氏が見事な手腕を発揮して成功を収めた。大半の一般議員、とりわけ自らの選挙地盤が弱い議員は、選挙区で自分が勝てるだけの十分な「風」を党のリーダーが吹かせてくれる限り、喜んで彼らに付き従う。
小池氏は同様のポピュリスト戦術を目指し、都知事選挙および自らの地域政党を率いて臨んだ都議会議員選挙において、自分と東京の自民党の既得権益との対決という構図をつくり出した。彼女は自らを反安倍、反「お友達びいき」と位置付けることで、「風」をもう一度、希望の党のために全国的に吹かせようと試みている。だが、まだ風は起きていない。人々を引き付けるため、彼女の党の公約は花粉症ゼロや電柱ゼロといった寄せ集めのキャッチコピー的政策によって、中身が薄いものとなっている。
一方、立憲民主党を率いる枝野氏もまた、自分と党について、「リベラル」でもあり、「保守」でもあると述べ、左右両方の浮動票を取り込もうとしている。彼はボトムアップ型民主主義と社会に根付いた政党の必要性を強調、他の党の一時しのぎのポピュリスト戦略を批判している。だが、中道左派政党として生まれたばかりの同党が、もし違ったやり方をするつもりなら、長い未踏の道筋を歩まなければならない。
つまり、不満を抱いた無党派大衆の間から新たな集団的アイデンティティを形成し、彼らを党の安定的な支持基盤へと組織し、単独にせよ連立を組むにせよ、保守派にとって代わり得る信頼できる別の選択肢となる必要がある。選挙の投票まで1カ月ない段階で生まれた政党にとって、これはほとんど絶望的な課題だろう。
(原文英語。英語版は2017年10月12日にnippon.comでウェブ公開した)
バナー写真:会談を終えて握手する希望の党の小池百合子代表(手前左、東京都知事)と民進党の前原誠司代表=2017年10月5日、東京都新宿区(時事)