支援体制がないことを理由に就学拒否も

子どもたちが日本社会の中で直面するのは、言葉や文化の壁だけではない。日本で生まれ育ち、日本以外の国には行ったことがなく、日本語しか話せない海外にルーツを持つ子どもであっても、肌の色やカタカナの名前、親が外国人であることなどがしばしば学校生活の中でいじめや差別の対象となり、生きづらさを感じている子も多い。

少し日本語を間違えれば「頭が悪い」。何か不満を口にすれば「国に帰れ」。「(肌の色が)汚い、うつる」と言われることですら、日本の中で多くの海外ルーツの子どもたちが経験する「あるある」となり、思春期にはアイデンティティーの確立に悩み苦しむ姿が見られる。

そんな子どもたちにとって、同じ境遇にあり、日本社会の「マイノリティー」同士が集まるYSCGSは唯一安心できる居場所であり、同じ思いを共有できる仲間との出会いの場ともなっている。「学校では友達はひとりもいなかった。ここに来たら、みんな同じって感じがするから楽」という声も聞いた。だが、当校のような支援機関にアクセスできる子どもたちの数は限られており、特に前述の外国人散在地域では、学校にも地域にも支援がなく、不登校となり自宅でひきこもっている、というような事例を耳にすることも多々ある。

また、自治体や学校に支援体制がないことを理由に、「日本語ができるようになってから学校へ来てください」と就学手続きをしてもらえないなど、事実上の就学拒否となり自宅にいるしかなかったという事例も存在する。

YSCグローバル・スクールでは、こうした外国人散在地域で暮らし支援へのアクセスがなく、日本語を学びたくても学べずに孤立してしまう子どもたちの課題解決を目指し、ICT(情報通信技術)を活用した遠隔地日本語教育プロジェクトを2016年11月からスタートさせた。福生市のYSCGSで行われる授業を全国各地の子どもたちに提供する。これまでに茨城、群馬、千葉、滋賀、山口などの散在地域や支援体制が不十分な地域に暮らす子どもたち約20名が利用。パソコンの画面を通して日本語学習や高校進学支援、仲間づくりをサポートしている。

福生市からオンラインで「外国人散財地域」などの子どもたちに日本語学習の授業を提供するプロジェクトも実施

「移民社会」到来―定住外国人や子どもたちの経験に学べ

政府は少子高齢化による人手不足に対する危機感から2018年6月に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針」(「骨太の方針」)において、新たな外国人人材の活用を定め、日本社会は大きな転換点を迎えることになった。7月には「外国人材の受け入れ・共生に関する関係閣僚会議」の第1回が開催されるなど、政治は想像していた以上のスピードで動き始めている。

今後、日本が海外からの働き手をより多く必要とする状況にあることは間違いないが、当然のことながら、やって来るのは「労働者」である以前にひとりの人間であり、私たちと共に日本社会を構成する生活者だ。その子どもたちには適切な教育機会が保障され、医療や福祉へのアクセスが開かれ、保護者自身が安心して子育てや生活を営めるような環境であるべきだ。さもなければ、今後国家間の人材獲得競争が激化するといわれる中で、日本が移住先として選ばれることが難しくなるだろう。

もはや避けることのできない移民社会の到来を前に、私たちがいま取り組まなければならないことは何か。すでに日本で長く生活している250万人以上の定住外国人や海外にルーツを持つ子ども・若者たちの経験から学び、彼らの力を借りながら、より良い共生社会の構築に向けて適切な施策や地域づくりを進めることではないだろうか。

(2017年8月 記/バナー、本文中写真提供=YSCグローバル・スクール)