冒険の共有を世界へ!

今流行りのSNSを駆使する栗城氏。最近、自分への反響に大きな変化を感じているという。

「以前、SNSのコメントや講演の後にかけられる声は、ほとんどが『頑張ってください』『応援しています』というものだったんです。でも最近は、『勇気をもらいました。自分も資格取得を目指して頑張ります』『僕もフルマラソン完走に挑戦しています』という、ポジティブで具体的なコメントが増えています。僕の“冒険の共有”というメッセージが少しずつ伝わっている気がしてとても嬉しいです」

しかし、双方向性のSNSを使う弊害もある。最初の頃にあったようなネガティブなコメントもいまだにあるというのだ。

「SNSを使ってタイムリーにメッセージを送っているので、批判や誹謗中傷されたりするのはしょうがない。当然失敗することもあるし、自分のカッコ悪い部分やダメな部分も見せてしまう。でも、それも含めて本当の“冒険の共有”なんだと思っています。実際は、けなされるとかなりヘコミますけどね(笑)」

世界を飛び回る飾らないリアルな登山家

登頂と同時に雄叫びを上げる。苦しい時は弱音を吐き、時には悔し涙を流す。楽しそうに食事のメニューを紹介するときもある。栗城氏の配信動画は、ストイックなイメージのある今までの登山家たちとは大きくかけ離れている。ネット経由でほぼタイムリーに発信されているので、飾らないリアルな登山活動が伝わってくるのだが。

「登山の状況は地上からは見えないものなので、今までは密室的な部分が多かったんです。有名登山家の方たちに直接お話を聞くと、皆さん色々な苦労や失敗をされているんですが、本やテレビではそういった部分がそぎ落とされた美談として語られます。それで、登山家はストイックなイメージで神格化されている感じがあるんです。だから、そういった方たちのファンから見たら、『お調子者の栗城のせいで、登山のイメージが悪くなる』と思われてしまうかもしれません。でも僕は、リアルな挑戦する姿を伝えたいし、世界中の人に登山を身近に感じて欲しいんです」

インターネットを活用しているため、最近では日本のみならず海外での認知度も高まってきた。今年講演しただけでも、上海や北京、韓国、台湾、ロンドン、ニューヨークと世界中を飛び回っている。ファンも急増中で、ロンドン・オリンピックの音楽を担当するイギリスのエレクトロニック・ミュージック・グループ「アンダーワールド」のふたりも栗城氏を熱狂的に応援している。

「サッカーなどのスポーツと一緒で、山の美しい景色や登山の魅力と過酷さは、言葉の壁を超えて伝わります。実際、経済成長が著しい中国の人たちはとてもポジティブで、僕が挑戦することの大切さを語ると、日本よりも強く共感してくれる方が多いくらいです。だから僕も、“冒険の共有”を世界中に広めていきたい。今年の春は『死の山』と呼ばれるシシャパンマ(標高8027m)、そして秋には4度目のエベレスト遠征に挑みます。これからもみなさんの応援を力に、“冒険の共有”を続けていきます!」

撮影=五十嵐 一晴(インタビューカット)