高いCP値を出すために犠牲となる労働者と食品安全

(野崎孝男氏提供)

こうした経営環境の中で無理に利益を出すために、労働者への違法な長時間労働の強制や社会保障に加入させないなどの手段がとられることは間々ある。また、大きなコストを占める油の交換を1週間に1回にするなど、経費削減を図っているところもあるだろう。ひどいところでは、粗悪品の油を使用している可能性もある。こうした行為がエスカレートすると食品の安全性が犠牲になり、それは健康被害という形で消費者に戻ってくることになる。実際に食品安全に関わる悪いニュースは後を絶たない。事件が起きるたびに政府は国民の健康を守るために、食品安全に関する法を整備し、事業者に安全、衛生に関する設備投資や管理強化を求める。事業者に対し新たな負担を課し経営コストを上昇させる一方で、事業者は上昇したコストを容易に価格転嫁できないことから、高いCP値を維持するために、一番簡単に経費を削減できる人件費にしわ寄せがいくという悪循環が発生しやすくなる。

ここではフライドチキンを例に出したが、他の業種でも高いCP値を出すためには原料コストの上昇は避けられないことから、遠からず似たような経営状況となる。安い原材料を手間暇かけておいしいもの、魅力あるものに仕上げるには、逆に多くの作業時間が必要となるため労働コストが非常に重くなる。労働に見合う対価が労働者にしっかり支払われていれば問題はないが、低賃金がまん延している現状から、ほとんどは違法な長時間労働という労働者の犠牲によって成り立っているのだろう。本来高いCP値の商品という価格より高い価値がある商品、すなわち安くてよい商品は、スケールメリットに支えられた薄利多売、または採算度外視のボランティア経営でもしない限り、中小零細企業では実現が非常に難しいことを忘れてはならない。多くの消費者が高いCP値を追い求め、称賛する社会になるということは、企業間の過剰なCP値競争を生み出し、コスト削減目的の低賃金または安全の欠如というモラルハザード(倫理観の欠如)がまん延しかねないのである。実際に食品の不正使用、残業代の未払い等の事件は後を絶たない。台湾でも日本でも店主自らが長時間労働や低賃金で働き、消費者のためにCP値の高い商品を提供している店が高い評価を受け称賛される傾向があるが、あくまで個人の自己犠牲によって成り立っている例外であり、労働に見合う適切な対価が支払われる健全な経済行為とはいえない。そして消費者がそのような例外こそが素晴らしいという価値観を持った時、最終的には労働者でもある消費者の自分にもその負担が返ってくる悪循環が発生してしまうのである。