台湾が学ぶべき点

翻って台湾を見れば、2008年の立法委員選挙(国会議員選挙)からは、日本をまねて小選挙区比例代表並立制を採用、同時に総議席数も113議席に半減させた。この制度による立法委員選は3度にわたり実施されたが、ほぼ同様の問題が出つづけてきた。それらの問題はわれわれが観察した、日本の選挙と選挙制度で発生した問題と類似点があるのだろうか。

まず、小選挙区制では得票率と議席数の比率の乖離(かいり)という「不比例性」の問題が発生しやすい。台湾の選挙結果でもそうだ。加えて、議席数が少なければ「不比例性」はさらに深刻になる。台湾では多くの地区で選挙区設定と議席の割り当てを巡る論争が出現しているほどだ。この種の「不比例性」に起因する議席数の格差がもたらす民意代表性のアンバランスは、二大政党制における不安定要素になっていく。次の問題だが、小選挙区比例代表並立制の結果、台湾でも日本と同様に、民意代表者の資質低下および党中央の権力の大幅増加という憂慮すべき内在的現象が発生しないだろうか。台湾の政党には党の指名を受けるための予備選という関門があるので、日本と比べれば同様な状況は発生しにくい。しかし、比例代表の名簿記載については「(党を)代表する」ことが「(個人の)能力度」よりも重視されるというジレンマは発生している。

蔡総統が最近になり憲法改革の議題を提出したことで、台湾の選挙制度と中央政府体制についての議論が改めて注目を集めている。議論に当たっては、今回の日本の選挙を観察し、場合によっては参考にしてもよい。現在のところ中央体制の変革については、総統制を内閣制に変えていくことについて賛否の声が出ている。ただ、現行と異なる体制の選択を求める背後には、国政における(総統と行政院長=首相による)二重首長制を廃して単一首長制を目指すという共通認識がある。しかし、新たな体制を選択して、台湾はいったい、どのような政治家に野望を遂げさせようとしているのか? 今回の日本の選挙で分かったことは、内閣制度の考えを採用すれば、地方でトップに立った首長、つまり六都(台北・新北・桃園・台中・台南・高雄の6市)の市長も、派閥の支持がなく同盟を結ぶ相手もなければ、個人的魅力が大きかったとしても内閣制度の下では国のトップになることは難しい。逆に、あらゆる手段に熟達したタイプの政治家で、派閥の支持も加われば、比較的容易にトップの座に就くことができるだろう。もしも総統制を採用すれば、豊富な地方政権の運営実績と個人的魅力を備えるタイプの政治家にとって、地方選挙の旋風を再現して民衆の信任を得るチャンスは比較的大きい。従って、今後の憲法修正の議論過程には、体制の選択については公共性からの分析だけでなく、どのようなタイプの指導者が出現するのか、当然ながらどのような人が野望を実現するのかを予測することも含まれてくる。

とはいっても、制度の選択の結果として、どのような優劣が生じるのか完全に判断することは容易でない。むしろ体制と選挙制度、場合によっては政党内予備選挙の制度による相乗効果こそが、制度を広範な視座でチェックして比較するために、さらに重要なポイントとなる。

バナー写真=衆院選で街頭演説する安倍晋三首相(自民党総裁)を応援するため、国旗を掲げる有権者=ら21日、東京都千代田区のJR秋葉原駅前(時事)