海運貿易会社「亀山社中」、新国家構想「船中八策」

龍馬は政治に奔走するだけでなく、海運・貿易事業も手掛けた。1865年、長崎・亀山を本拠地とする「亀山社中」(かめやましゃちゅう)を組織。長州藩が必要とする武器や軍艦を、薩摩藩名義で購入する活動をするなど、戦力面でも同盟を助けた。

亀山社中のメンバーは、66年6月に起きた幕府と長州藩の戦争(第二次長州征討)では、長州藩の軍艦ユニオン号に乗り組んで下関海戦に参加。これは、龍馬の生涯で唯一の実戦経験となった。

亀山社中は後に、土佐藩の外郭団体「海援隊」(かいえんたい)となった。二曳(にびき)と呼ばれた海援隊旗(複製)。

龍馬は、幕府が政権を天皇に返上する「大政奉還」や議会開設などを含む、新しい近代国家の構想「船中八策」(せんちゅうはっさく)を考案したことでも知られる。67年6月、土佐藩船で長崎から兵庫へ向かう途中、同藩の重役・後藤象二郎(ごとう・しょうじろう)に伝えたものだ。

「船中八策」に感銘した後藤が藩論をまとめ、大政奉還は土佐藩から徳川慶喜(とくがわ・よしのぶ)に建白され、67年10月に実現した。その後、船中八策は「新政府綱領八策」となり、明治政府の政策綱領「五箇条の御誓文」(ごかじょうのごせいもん)に受け継がれていく。

「新政府綱領八策」(複製)には、もちろん大政奉還の項はない

見廻組による暗殺が定説

1867年11月15日、龍馬は同志の土佐脱藩浪士・中岡慎太郎(なかおか・しんたろう)とともに近江屋で襲われた。幕府の治安組織「京都見廻組(みまわりぐみ)」の仕業というのが定説だが、実行犯や黒幕には諸説あり、いまだ謎に包まれている。龍馬はわずか33歳の若さで、この世を去った。

薩摩、長州、土佐藩を中核とする新政府軍は、68年(明治元年)1月3日に鳥羽・伏見で、旧幕府勢力との戦端を開いた。この戊辰戦争とよばれる戦いは69年に終結し、明治政府による新たな国家建設が始まった。

龍馬暗殺シーンをシルエット映像で再現した展示

小説やドラマの主人公に

坂本龍馬の短いが劇的な生涯は、今なお日本人の心をつかんで離さない。2008年に発表された「日本人の好きなもの」(NHK放送文化研究所世論調査部編、NHK出版刊)の「好きな歴史上の人物」編では、織田信長(おだ・のぶなが)、徳川家康(とくがわ・いえやす)に次いで第3位となっている。

その大きな要因の一つは、ここでもいくつか紹介した、龍馬が残した手紙だ。天下国家を先鋭的な見方や強い決意で語りながら、どこか飄飄(ひょうひょう)としたところがある。時には、絵などを用いて分かりやすく説明する。その生き生きとした内容が、龍馬の魅力的な人物像を想像させる。それが政治経済にまたがる華々しい活躍と相まって、数多くの小説、映画、テレビドラマの題材とされた。

乙女への手紙で、妻・お龍(りゅう)と新婚旅行で行った「天の逆鉾(さかほこ)」を説明する部分。絵の上に記号「イ」「ロ」「ハ」「ニ」を置き、横にその地点の説明文が添えられる。まるで現代のガイドブックのようだ

1911年には、早くも映画が製作された。62~66年に作家の司馬遼太郎が、産経新聞に連載した歴史小説「竜馬がゆく」は人気を呼び、何度も映画・テレビドラマになった。それが現在も読み継がれ、一般的な坂本龍馬像のもとになっているとの指摘がある。

「竜馬がゆく」は中国、韓国でも翻訳された。中国ではもともと明治維新への関心が高いが、幕末の志士の中で、龍馬の名は特に知られている。小説や多数の映画、テレビドラマの影響が大きいと考えられる。

米国では、61年にプリンストン大学名誉教授のマリウス・バーサス・ジャンセン氏が学術論文「坂本龍馬と明治維新」を書き、龍馬を世界に紹介した。司馬の小説も、その論文から影響を受けたと言われている。

京都観光のついでに、襲撃事件のあった寺田屋など龍馬ゆかりの地を訪ねてみてはどうだろう。現在休館中の高知県立坂本龍馬記念館(高知県高知市)も、2018年春にリニューアルオープンする。

会場の模様。右に展示されているのは、当展を主催するソフトバンクグループ代表で、龍馬の大ファンである孫正義氏が社長室に飾っている「等身大 龍馬写真」
撮影協力=龍馬没後150年高知県立坂本龍馬記念館巡回展「土佐から来たぜよ!坂本龍馬展」
文=井上 雄介
写真=ニッポンドットコム編集部
(バナー写真=孫正義所有「等身大 龍馬写真」より)

【イベント情報】

龍馬没後150年高知県立坂本龍馬記念館巡回展「土佐から来たぜよ!坂本龍馬展」
会場:ホテル雅叙園東京 東京都有形文化財「百段階段」
期間:2017年6月1〜25日
時間:午前10時〜午後6時(午後5時30分最終入場)
入場料:当日券1500円、前売券1200円(館内前売券1000円)、学生800円
主催:ソフトバンクグループ株式会社、公益財団法人高知県文化財団 高知県立坂本龍馬記念館

(*1) ^ 旧暦。伝記部分、以下同。