作家としてさらなる高みを目指す
「窯変」によって独自の作品を生み出した赤水さんは、1972年に日本伝統工芸展に初入選。一気に評価を高めていき、77年には「五代伊藤赤水」を襲名した。そして、さらに新しい世界を切り開いていく。次に挑戦したのは、異なる色の土を練り合わせて模様を作る表現手法「練上(ねりあげ)」だ。85年の第8回日本陶芸展において、「無名異 練上鉢」で大賞・秩父宮賜杯に輝いた。
初期の練上は、線をベースにしたシンプルな文様だった。現在は、土を重ねて巻きずしのようなものを作り、輪切りにした断面を並べて、花や魚、鳥といった模様をあしらった作品へと昇華させている。
2003年に人間国宝に認定されてからも挑戦を止めない。09年には、火山島である佐渡島特有の流紋岩や花こう岩といった岩石を素材に用いた「佐渡ヶ島」シリーズを発表。自然石を使うことで、荒々しくも素朴な力強さを無名異焼に加えた。
ふるさと佐渡島、そして家業の無名異焼を「重いもの」と述べながらも、赤水さんの作品に向かう姿勢や発想はとても自由で軽やかだ。伝統にとらわれず、鑑賞者にもこびない。
「少し格好つけた物言いですが、私たち作り手は自分のセンスを信じて、作りたい物を作ります。それが、結果的にユーザーに受け入れてもらえるならベターでしょう。基本的な考え方は『自分でクリエイトする』ということ。メークではなくクリエイトして、人とは違う物を生み出すわけです。うちは代々、無名異というものを焼いてきましたが、そのジャンルの中で、いかにオリジナリティーを発揮するかが重要なのだと思っています」(赤水さん)
佐渡島独特の文化を伝えるという使命
赤水さんの作品は、日本のみならず世界的にも評価されている。海外の美術展に幾度も出品し、米国のメトロポリタン美術館や国立スミソニアン美術館、英国の国立ビクトリア・アンド・アルバート美術館などに作品が所蔵されている。エネルギーはいまだに旺盛で、76歳を迎えた2017年には、7年がかりで準備した個展「RED SOIL」をニューヨークのマンハッタン・ギャラリーで開催した。
無名異焼と佐渡島に重圧を感じながらも、それをバネにするかのように、自由かつ精力的に作品を発表し続ける赤水さん。最後にもう一度、佐渡島の魅力について問うと、「佐渡島が外に向かって発信できるものに何があるのか。そう考えた時にやっぱり文化じゃないかと思っています」と答えてくれた。
「佐渡島は古代から遠流(おんる)の島でした。たいがいは中央政権に盾突いた人が流されて来た。順徳天皇も、日蓮も、世阿弥もそうです。ただ、ユニークなのは、自給自足をしなさいという条件が付けられたこと。だから、島から出なければ結婚するのも、自分の才覚で商売を始めるのも自由だったのです。結果として、中央の風俗が伝わり、文化的には非常に高度で自由なものが育まれ、しっかりと根付いた島だと言えます。もし私の作品を通じて佐渡島に興味を持っていただけるのなら、『日帰り観光くらいでは回りきれないですよ』とお伝えしたい」(赤水さん)
伊藤赤水 作品館
- 住所:新潟県佐渡市下相川808-3
- 開館日:4月の第2土曜日から11月23日まで無休(冬季休館)
- 開館時間:午前8時30分 ~ 午後5時(閉館が早まる時期もあるので要確認)
- TEL:0259-74-0011
取材・文=青木 康洋 写真=三輪 憲亮






