予測不能な収穫量に対応する

トウモロコシ畑を訪問。地元農家は従来農法と比較した新技術の効果を自らの目で確認できる。

笹川アフリカ協会は1996年、マリ国内の4つの地域でプログラムを開始し、最終的に416カ所の村で試験区画に作物を植えつけた。地元の人々は従来の農法で耕作された畑と比較して、新しい技法がいかに効果的かを自らの目で確認した。

しかし、生産量を増やすことは最初の一歩にすぎない。笹川アフリカ協会が他のNGOと異なっているのは、地元農家が協同組合の仕組みを発達させ、収穫の余剰分を販売できるように支援している点だ。気候変動のために食糧供給の不安定度が増すとみられる時代にあって、貯蔵施設の改善も優先課題とされている。

セリンゲ村のドゥンビア村長によると、これまでは、村でもっとも収穫量の多い農家が穀物の1割を村の備蓄のために提供していたという。村の家々の間には昔ながらの穀物庫が点在している。泥壁の上に円錐形のわら葺き屋根を乗せた小さな丸い建物だ。

笹川アフリカ協会が導入したトウモロコシの皮むき機の実演をする女性。

村ではこの非公式の仕組みを一種の「ザカート」(イスラム教の伝統である救貧のための施し)と捉えている。地元農家のアダマ・ドゥンビアは、マリ国内でさらに環境が不安定な地域には組織的な穀物貯蔵システムがあるが、セリンゲではこれまでその必要がなかったと説明する。だが2011年は雨量が少なかったため、住民は初めて、ザカートの蓄えだけで全員の分を確保できるかどうか不安を感じている。笹川アフリカ協会が提供する改良型の貯蔵技術がセリンゲでも不可欠な状況になりつつあるのだ。

農家に対する財政支援

笹川アフリカ協会は財政支援も行っている。農家は昔から穀物価格の季節変動に悩まされてきた。収穫前に貯金を使い果たした農家には、農作物が供給増で値下がりする時期に売りに出さざるを得ないことがよくあった。さらに収穫期は新学期と重なり、教科書代や親元を離れて中学校に入学する子どもの生活費など、支出のかさむ時期にあたっている。数ヵ月後にはまた、家族の食料を確保するために穀物を買い戻さなければならない。その頃には穀物が品不足になって価格が大幅に値上がりするため、農家の多くは赤字を出すことになる。

この問題を克服するために、笹川アフリカ協会は農家が作物を早めに売っても、数ヵ月後に必要が生じた場合に同じ価格で買い戻す権利を保証するスキームを進めている。

笹川アフリカ協会のマリ・チームは現地の人材や技能を大いに活かしている。地域責任者のアブゥ・ベルテ博士は、バマコ近郊にある国立地域経済研究所の所長も務めたことのある動物学者だ。博士のチームには、毎週数百キロも移動して僻地の村を訪ね歩くボカール・シソコ氏など、熟練した農学者もいる。

シソコ氏はだいたい2カ月毎にセリンゲ地域を訪問している。現在、村にインターネット回線を導入する可能性を探っているところだ。インターネットがあれば村の事務官は農産物価格をチェックできるし、町から必需品を仕入れるタイミングも判断できる。

この数十年間に実施された開発計画で、村にはすでに大きな影響がもたらされている。村の年長者の多くはマリの行政・ビジネス言語であるフランス語をほとんど使えないが、若い世代では識字率は遥かに高く、近代的な商業経済で不自由はない。