とにかく「リカとカンチ」になって誕生日を祝いたい

ビデオテープがVCDやDVDに変わり、台北市にある商業施設の光華商場ではいつでも日本ドラマの全集が買えるようになった。しかしその後、テレビ局がライセンスを獲得した日本ドラマがどんどん増えて、海賊版のディスクをこそこそと買う必要もなくなった。レジェンドである「東京ラブストーリー」と「101回目のプロポーズ」は世代のシンボルとなった。だれもが誕生日になれば、ろうそくに火をともしながら、ろうそくの本数ごとに、その歳に出会った人のことを話した。全てが「東京ラブストーリー」に登場する「赤名リカ」が「永尾完治」の誕生日を祝うシーンのまねだった。街でだれかと別かれる時には、「1、2、3」と数えてそれそれが後ろ向きになる(日本語オリジナル版では「せーの」という掛け声)。「101回目のプロポーズ」のシーンのように車の前に出て、大声で「僕は死にません」と叫ぶ者もいた……。こういった児戯のようなことをしていた。中年以降になってもドラマ談義に花が咲く。「もし、リカとカンチが結婚していても、今はもう離婚しているだろうねえ!」といった具合だ。

世代にとってトップクラスの意義を持つもう一つの作品は「あすなろ白書」だろう。テーマ曲の「TRUE LOVE」は20年を経た今もなお、小田和正の「ラブ・ストーリーは突然に」、CHAGE & ASKAの「SAY YES」とともに日本ドラマの3神曲とされている。この種の澄んだ高みに上る味わいを思い出せば、それは青春が葬られている海の深みに潜ることになる。現実に戻るのが嫌になってしまうような秘密の薬だ。

木村拓哉は日本ドラマの時代の刻印

木村拓哉の日本ドラマは、台湾の日本ドラマファンにとっては、心の歳月の物差しだ。1993年の「あすなろ白書」の黒縁の眼鏡をかけた取手治、96年の「ロングバケーション」のピアニスト、97年の「ラブジェネレーション」では長髪を後ろで結んだ広告会社のスタッフ、98年に中山美穂と共演した謎に包まれた「眠れる森」、99年の「ビューティフルライフ~ふたりでいた日々~」では結末で人々を泣かせた美容師、続いて2001年の「HERO」での久利生公平、07年の「華麗なる一族」の悲劇の主人公である万俵鉄平、そして08年の「CHANGE」の朝倉啓太は、台湾のドラマファンにとって期待する政治家像になった。だが、私にとって忘れがたい作品は木村拓哉と明石家さんまが共演した「空から降る一億の星」だ。しばしば人々の記憶から抜け落ちてしまう作品で、もう15年も経ったので細かい部分の記憶は薄れてしまったが、今も明石家さんまの打って変わった演技を思い出す。

木村拓哉が主演した日本ドラマは再放送を重ねてきた。それはまるで、日本ドラマファンの一人一人にとって、過ぎ去った歳月に刻まれた記憶を取り出すための錠前のようでもある。「カンチ」の誕生ケーキを思い出せば、あの年、長い休暇を過ごして、その後は恋をしたのだったと思い出す。そして、久利生公平はテレビショッピングで何を買ったのか、総理大臣になった木村拓哉が官房長官役の阿部寛にどんな名せりふを言ったのかなども覚えている。

われわれはこうして、木村拓哉と共に歳を取っていくのだ。