無垢の原石を輝かせる極意
物語の中心は、菅田将暉と仲野太賀が演じる二人の高校生、そしてタロウだ。タロウ役は300人以上のオーディションをしても見つからず、インスタグラマーとして一部で話題になっていたYOSHIにたどり着いた(リンク:『タロウのバカ』主演のYOSHI、新時代アンチヒーローの予感)。
「写真を見て会いたいと思って、実際に会ってみたら、礼儀が全然ちゃんとしていない(笑)。子役をやっている子たちのように『社会化』されていないんですよ。自分の思ったことをパーンと言う。でも頭がいいな、よく分かっているな、と思ったのは、自分の感じたことが大切だというのを意識的に理解している。それとタテ社会への反発が彼なりにしっかりあって、この映画にぴったりだったんです」
そんな奔放な野生児で、しかも演技未経験の15歳をどうやって撮影というプロの作業に組み入れていったのか。その秘策は、キャストの俳優を一人付けて、劇中でタロウが母親と暮らす一室のロケセットに一緒に住まわせること。近年の大森組常連で、半グレ役の荒巻全紀に白羽の矢を立てた。
「YOSHIくんは当時まだ事務所にも入ってなくて、マネージャーもいなかったので、まず何より撮影に来なかったらヤバイなあって(笑)。だから絶対、朝起こして連れてきてくれる人が必要だなと。俳優に住み込んでもらって、YOSHIくんの身の回りの世話と、セリフの練習をやってもらった。YOSHIくんには最初から、セリフは全部覚えてくれって言ってありましたから。あとは現場に来たら、自分が何を感じるかが一番大事だよと言い続けていました」
YOSHIを起用したことで、撮影の方法も現場の空気もこれまでとはかなり違ったものになったという。
「とにかく主役のYOSHIくんが生き生きするために、スタッフがどういう現場を作るかっていうのを第一に考えましたね。俺たちの映画作りはこうだと気合を入れたってうまく行かない。彼の存在を生かすためには、映画の現場特有の封建的な、効率重視の厳しい世界、そういう空気を出さないようにしました。ほんとに遊んでいるような撮影の現場になるんですけど、この映画はそのほうがいい作品になるんだと思って、自分を変えていった。カメラも、3人の無軌道な少年たちを撮るわけですから、立ち位置決めて、フレーム決めてから俳優を入れるんじゃなくて、俳優がいるところがフレームになるんだっていうくらいの気持ちでやってもらいましたね」



