テーマって何?
ほぼ四半世紀に渡って温め続けた作品だけに、今回は「やりたい」という気持ちが特に強かったという大森監督。過去の長編10本のうち、自身のオリジナル脚本は2本。そのほかは小説を原作とする作品が5本、あとは漫画とエッセイ(『日日是好日』)だ。ジャンルや作風の異なるものに取り組みながら、何か共通して求めるものはあるのだろうか。
「原作物だったら、一読したときの印象で面白いと思ったものをやろうとしているだけです。自分のいる世界の外側に向かう力があるものに対して、素直に反応するんですよ。オリジナルだとそれがはっきり出てくる。原作物だとオブラートに包まれていながら、そういう匂いのするものに引かれている。僕の中では、茶室もその一つでした。究極はやはり、死という、絶対に分からないもの。自分自身が想像もつかないものに向かってみたいというのはあります。新しいものに出会って、自分を試して、自分も外側に一歩出てみようと。あとは人との出会いやタイミングが作品を決めますね」
作品に込めたテーマについてよく問われるが、その安易な問い方には反発を感じるようだ。
「明確なテーマがあるわけじゃないし、あるべきとも思わない。テーマを追いかけるのではなくて、このキャラクターたちを自然に追いかけたいんですよ。学校に行っていないとか、ピストルを偶然手に入れてしまうとか、物語の要素として出てきますが、それはテーマじゃない。具体的にどういうテーマを打ち出したいとか、どういうテーマにたどりつきたいとか、そういう風に映画作りをしてはいないんです。名前のない、学校にも行っていないタロウ。そういう1人の人間をどのように見つめ、どう向かい合うのか。でも、こういうことを強いメッセージとして言いたい、というわけではないんですよ」
言葉にならないものを、努めて言葉にして伝えようとインタビューに臨んでくれた大森立嗣監督。彼が『タロウのバカ』に注ぎ込んだものは、スクリーンを通して全身で体感するしかない。
インタビュー撮影=花井 智子
聞き手・文=松本 卓也(ニッポンドットコム多言語部)
作品情報
- 監督・脚本・編集:大森 立嗣
- 出演:YOSHI、菅田 将暉、仲野 太賀、奥野 瑛太、豊田 エリー、植田 紗々、國村 隼
- 音楽:大友 良英
- プロデューサー:近藤 貴彦
- 撮影:辻 智彦
- 製作:「タロウのバカ」製作委員会
- 製作プロダクション:ハーベストフィルム
- 配給:東京テアトル
- 製作年:2019年
- 製作国:日本
- 上映時間:119分
- 公式サイト:http://www.taro-baka.jp/
- 9月6日(金)、テアトル新宿ほか全国ロードショー



