法改正されても改善されない刑務所の医療

——今の刑務所で一番問題なのは医療と言われますが、処遇法が施行されても改善されていないのでしょうか。

現在、監獄人権センターには年に1000件を超える手紙相談がありますが、やはり医療関係が多数を占めています。本来、自由を奪うこと自体が刑罰ですから、それ以上の苦痛は与えてはいけないというのが国際的なルールです。法務省自身も、医療については大きな課題があると認識しています。

刑事施設に勤務する医師の不足は深刻で、法務省がその確保に一生懸命頑張っているのは認めますが、大きな改善には至っていません。また法改正時に、「指名医による診療」といって外部の医師に診てもらえる制度などもできましたが、ほぼ活用されていません。民間ではもう訪問医療の時代であり、私たちは刑務所でも活用するべきだと思っています。

ただ、刑務所はセキュリティを過剰に気にしていて、できるだけ外の人は入れたくないし、受刑者を外に出したくない。施設内ですべて完結させようとします。それが必要な医療を受けることを難しくさせています。また、施設内の医療であっても、受刑者を職員が医師のところに連れて行き、診察に立会いをするので、常に人手不足の刑務官にとっては負担になっている。その負担軽減のために診療に連れていく受刑者を減らしたいという流れにもなっています。

後回しの医療を早急に独立させるべきだ

多くの施設では准看護師の資格を持つ刑務官が、医師に診てもらう受刑者の優先順位を決めています。ただ受刑者の中には「医療を拒絶された」と受け取って申し出ることをやめてしまったり、あまり波風立てずに早く仮釈放をもらい出所したいからと、我慢したりする人もいる。でも、それを施設側は、「不満が出ていない」から「問題がない」と捉えてしまいます。

一方で、刑務官による優先順位の判断が間違っていたり、休日や夜間で医師がいない、あるいは職員が少ないからとためらったりして、容体が急変して手遅れになるケースもあるのです。

医療面のニーズとセキュリティ面のニーズは衝突する場面が避けられないので、刑務所が両方のニーズに対応すると、どうしても医療面が後回しになる。刑事施設医療は厚生労働省に移管するべきだと要望していますが、まずは一部の施設で行われているように医療の外部委託化を進めて実質的に医療部門を独立させるなど、できるところからやるべきだと思っています。