馴染みの薄い台湾ソウルフード

タビオカミルクティーの大ヒットにはこのようにさまざまな理由があったのだが、最大の要因は、「女子が好む」アイテムだった点だ。

2014年11月、赤坂にオープンした三商巧福。牛肉麵は、醤油ベースの紅焼、出汁ベースの清燉、どちらも味わえる。台湾ビールなどのアルコールのほか、台湾風オムレツや夜市で見かけるイカボールなど、つまみも充実している。
2014年11月、赤坂にオープンした三商巧福。牛肉麵は、しょう油ベースの紅焼、出汁ベースの清燉、どちらも味わえる。台湾ビール、台湾風オムレツや夜市で見かけるイカボールなど、つまみも充実

その前に、台湾発のほかのグルメを見てみよう。

台湾のソウルフードの一つである牛肉麵は、柔らかく煮込んだ牛肉をトッピングした麺料理で、しょう油べ―スの「紅焼」と、出汁ベースの「清燉」という2種類の味がある。台湾では専門店が多く、半屋台のような食堂もあれば、エアコン完備のおしゃれな店もある、老若男女が大好きな麺料理だ。

台湾で約150店舗の牛肉麵専門店のチェーン展開する三商巧福が、2014年日本第1号を赤坂にオープンした。2014年の前後数年は、タピオカミルクティー発祥の春水堂やマンゴーてんこ盛りのかき氷が話題のアイスモンスターなど、台湾の超有名店が日本で次々と出店した頃で、三商巧福の牛肉麵もさぞやブレークするだろうと思いきや、オープンから7年たった今も、店舗は赤坂店のみだ。

この違いは何だろう?

台湾を訪れたことがある人は、好き嫌いはともかくとして、牛肉麺と聞けば、味の想像がつくだろう。だが、台湾のみならず、アジア圏を旅行したことがない人には未知の料理だ。タピオカと違って、過去ブームになったことがなく、料理名に馴染みがないのでイメージがわきづらい。

さらに、赤いスープの紅焼牛肉麵は、煮込んだ肉やスープにたっぷり八角を使っている。八角は、中国料理に欠かせないスパイスで、胃腸の働きを整える漢方である。「台湾を香りでたとえるならば八角」と言っても過言ではないほど、台湾の街ではあちこちの飲食店から八角の香りが漂ってくる。この独特な香りが、苦手な日本人が多いのだ。さらに、トッピングに使われるパクチー(香菜)を嫌がる人が多いことも、浸透を阻む理由になっているだろう。

味だけではない。日本人は、専門店よりも何でも食べられる店が好きだ。もちろん、そば、うなぎ、天ぷらの専門店はあるが、いずれも日本の食文化に深く根付いたものばかりだ。新参者で専門店となると、なかなか広まらない。

そして、タピオカミルクティー同様、いちばんの理由。それが対象の性別だ。

台北市信義区「穆記」の牛肉麺。近隣の病院のスタッフにも愛される老舗(撮影:鄭 仲嵐)
台北市信義区「穆記」の牛肉麺。近隣の病院のスタッフにも愛される老舗(撮影:鄭 仲嵐)