助けを求めても「逃げる」場所がない

BONDの日々の活動は、メール相談、電話相談、面談はもちろん、移動式「カフェ型」相談室、街頭パトロール、街頭アンケートなど「動く相談窓口」として少女たちの声を聞くことだ。そして、必要に応じて弁護士と連携して、他の専門機関などにつなぐ。一時的な保護、役所まで付き添う同行支援、さらに中長期の保護や自立支援生活の見守りなども行っている。

2016年の相談件数は延べでメール1万2395件、電話相談1979件、保護は1105件だった。毎月40件から60件の新規の相談がある。

渋谷で街頭アンケートを行う筆者とBONDのスタッフ(撮影: KEN)

「親に殴られるから帰れない」「家出してネットで知り合った男の人とホテルにいる」など全国の10代、20代の女の子からのSOSが寄せられる。虐待や性被害を受けてきた女の子の中には、自分に危害を加えたり利用したりする大人しか知らなくて、助けを求めるすべもなかったりする。公的支援につながる方法を一緒に考え、BONDのシェルターで一晩過ごしてもらうこともあるが、児童福祉法に基づく制度による支援につながることは少ない。

例えば児童相談所は20歳未満が援助の対象だが、命の危険がある幼い子を優先して保護するため、10代後半になると保護の対象となりにくい。児童養護施設や自立援助ホーム(15歳から22歳までの人が寮生活を送りながら社会的自立を目指す施設)へつなげてもらえる機会は限られてしまう。「親を悪者にしたくない」と、事実を人に話せないまま親からの暴力や暴言、性的虐待に耐え続けたり、成人してからも精神的に親に束縛されたまま逃げられないケースだってある。どうにか「逃げよう」と思うことができても、女の子たちは「家出」しか方法が思い浮かばないのだ。今帰る場所のない女の子が被害にあう前に逃げ込める場所、公的支援を受けるまでの間安心して過ごせる場所、自立に向けた中長期的な生活の場がもっと多く必要だと思う。

自立生活支援ための「ボンドのイエ」

働いて一人暮らしをするには、体力的、金銭的、精神的ゆとりが必要だ。だが、虐待の後遺症から心が不安定で学校や仕事に通えなかったり、「年齢的に親の承諾が必要」「住民票がない」「身分証明書を家から持ち出せなかった」などの理由で、賃貸契約が結べず通常の働き先を見つけることも難しい。本来、支えが必要な環境の子ほど、自力で生き延びる道しか選択肢がなくさまざまなリスクにさらされることになる。

わずかな食料や眠る場所のために性を売らざるを得なかったり、身分証明書がなくても働くことができる“闇”の世界に助けを求めたり、栄養不足と不安定な路上生活などから心身を壊してしまったり…。その結果として望まない妊娠・出産、産み捨てや生まれた子への虐待、自傷や自殺、他害や他殺といった社会問題や事件につながるなど、彼女たちを孤立させることで社会もまた、大きなリスクを抱えている。

女の子たちが自暴自棄に負のスパイラルに陥ってしまわないよう、安心できる場で立ち止まって休み、自分を大切にしたいと思えるよう心身の健康と、人とのつながりを得ていく時間が大切だ。今の時代にあった保護ができればと強く思う。今年7月下旬には、自立生活支援の家「ボンドのイエ」を東京都内に開設した。さまざまな理由で居場所のない10代~20代の女性たちを受け入れ、スタッフが夜は宿泊して、食事の面倒などを見ている。時間がかかっても彼女たちが自分で自分の生き方を決められる日が来ると思いたい。きっと一番しんどい時に私たちと出会っただろう女の子たちに対して、生きる力があると信じているからこそ伝えたいことがある。「声をあげてくれてありがとう。そっと見守らせてね」と。

(2017年10月10日 記)

バナー写真:夜の街で少女たちの声を聞く橘ジュン・NPO法人「BONDプロジェクト」代表(撮影:KEN)