なぜ政党中心ではないのか
こうした基本的に見通しの暗い状況の中で、一つの希望が持てる動きは、地方レベルでの健全な政党間競争の必要と役割について、より真剣な議論が出てきていることかもしれない。
日本の地方政治の大きな特徴は政党同士の競争が比較的に弱く、それに伴って、政策綱領の選択肢と有権者に対するアカウンタビリティが不足していることにある。町村レベルでは議員の88%が無所属(ただ、その多くは自民党系の保守派)で、市議会でも63%が無所属となっている。大都市の議員の多くは党の候補として出馬するにしても、彼らは選挙や議会で一つの党として、いつも効果的に連携して動くわけではない。これらの候補は同じ党の看板を掲げているにもかかわらず、自治体全体のための統一綱領を提示するのではなく、基本的に自分の個人的資質と特定の狭い支持層との結び付きによって票を得ている。
その元凶は無秩序な選挙制度にある。現在の制度では、地方自治体は2議席から20議席までのさまざまな規模の複数議席選挙区か、全体を単一の選挙区とする大選挙区(そうした選挙区で最大のものは東京の世田谷区で、50議席を数える)のいずれかに分けられる。有権者は多くの候補の中から1人を選び、1票を投じる。そうした複数議席選挙区は1996年に廃止されるまで、日本の衆院選でも採用されてきた。だが、この制度は汚職につながりやすく、個人中心の選挙が派閥をもたらし、過度の利益誘導型支出や戦後の政権交代のなさの原因になっていると批判された。
専門家たちは、同様の欠点を持つ地方の選挙制度の在り方を以前から指摘してきたが、中央省庁がようやく彼らの主張に耳を傾けようとしていることは朗報と言える。2017年7月、政府が設置した地方議会に関する別の研究会は、比較的大きな都道府県や大都市について、比例代表制の採用を提案した。
比例代表制のメリット
比例代表制の採用は政党が政策を掲げて選挙運動を行い、政策を策定、立法化することにつながる。政党同士の競争が明確になることで、たとえ対立による政治の行き詰まりのリスクがあるにせよ、行政をよりしっかり監視するようになるだろう。個人が独自に選挙運動を展開するのに比べ、選挙運動が連携して行われるため、選挙コストも下がるだろう。有権者は何十人もいる候補者一人ひとりのバックグラウンドを比較する必要がなく、はるかに容易に自らの投票行動を選択することができる。
議員の側も、政策の策定、首長を監視する人的・物的・財政的資源を同じ党のメンバー間で分担することができ、議会はより活性化するだろう。自治体をまたいだ党の結び付き、中央の党組織からの支援もまた、選挙運動および政策ノウハウにおいてスケールメリットをもたらすだろう。
政党政治はもちろん、とりわけ地方レベルでは、リスクなしというわけにはいかない。地方政治が全国組織に従属し、地方の自治を損ねるとの批判もある。
総務省の研究会では議論されなかったものの、地方政党の自立を確保するため、地方政党助成金制度を導入してもいい。地方議会議員には既に、目に見える結果をほとんど出していないもかかわらず、政策調査のための補助金が支給されている。これらを新たな政党助成金の原資とすべきだ。
地方でも必要な政治的競争
地方レベルでの政党政治推進がもたらし得るもう一つの利点は、新党や野党が社会によりしっかり根を下ろすのを容易にするかもしれないことだ。野党勢力はこれまで、地方の自民党と同党系の保守派の支配に対し、地方にプレゼンスを確立することができないできた。全国レベルと結びついた地方での活発な競争は、全国的な政党間競争の強化に貢献するだろう。
地方選挙制度に関する研究会報告は、残念なことに、政党政治は町村、さらには小規模の市にさえ、おそらく適していないのではないかとの見解を示している。
つまり、政党は「対立的」で、社会的分断と利益衝突がほとんどない地方の自治体には適していないというのである。だが、われわれはこうした想定を見直してみる必要がある。
最も小規模な村でさえ、自らの存続にかかわる決定的選択に直面している。そうした選択を迫られる際には、政党によって組織され、持続的に展開される政治的競争が役立つのではないだろうか。また、政党政治は健全な地方行政にとって逆効果だという想定もすべきではない。北欧諸国ではすべてのレベルの選挙で比例代表制を導入し、地方行政は十分に機能している。これらモデルとなる民主主義国では、最も小規模なコミュニティでも政党間競争が代表(議員)選出の多様性と高い参画率をもたらしている。