真の復興に向けて

もし溶融燃料の状態を把握することに成功しても、それはやっと取り出し作業の入り口に立ったに過ぎない。溶けて変形した燃料をどうやって取り出すか。格納容器を水で満たし、新たに開発する装置で取り出す方法が有力とみられるが、そもそも格納容器に水を張れるかは疑問だ。格納容器が事故で破損しているのは明らかで、今の状態ではどんなに水を入れても地下に漏れてしまう。損傷箇所を特定して漏洩しないように修復しなければ水を張ることはできない。もちろん損傷箇所が1カ所とは限らない。

事故当時、原子力の安全規制を独立した立場から監視していた国の原子力安全委員会で、委員長として政府への助言役を担った班目春樹氏は「格納容器の水漏れを止めるのは難しく、もし水が張れない場合、ロボットで取り出せるというほど生易しいものではない」とみる。もし水が張れたとしても、溶けた燃料の塊をまとめて取り出せるわけではない。当然、切断する必要が出てくる。切断したものを取り出せても、どこにどのような形で保管しておくのか、見通しすらないのが現状だ。

班目氏は廃炉完了までに「100年単位でみれば、なんとか終わるのではないか」と言う。先ごろ廃炉が決まった関西電力美浜原発1、2号機は廃炉作業完了までに約30年、日本原電敦賀1号機は約25年かかる見込みだ。これはあくまで、事故を起こしていない普通の状態からの廃炉作業にかかる時間である。

第1原発の状態を考えれば、班目氏の予想は、政府・東電の工程表よりよほど的を射ているだろう。そもそも政府・東電の工程表で掲げた「廃炉完了に最長40年」に明確な根拠などない。廃炉作業がどう進むのか確たることは言えず、溶融燃料の状態や放射線量の状況一つで工期は大きく左右される。

おそらく政府・東電はそう遠くない将来、廃炉工程表を見直すことになる。だがもし廃炉完了が長引いたからといって政府や東電を責めても仕方がない。廃炉作業はスケジュールを守ることが目的ではない。安全、確実に廃炉を成し遂げることに重点を置かなければならないのだ。その先にこそ真の意味での福島の復興がある。

バナー写真:東京電力福島第1原発を視察する原子力規制委員会の田中俊一委員長(手前)=2016年2月13日午後、福島県大熊町(時事、代表撮影)