前進と停滞:まだら模様の復興状況
あれから間もなく5年。石巻の中心市街地から津波の痕跡はかなり消え、再開発ビルや復興公営住宅建設のつち音が響く。市立病院も駅前に移転工事中。「漁業の町」顔ともいえる石巻魚市場も新築され、2015年9月に全面運用を開始した。15年の水揚げ高は震災前の8割にとどまるものの、金額ベースでは約180億円と、ほぼ同額までに回復した。
一方で、旧北上川河口近くの南浜、門脇地区は住宅建設が禁止され、がれきが撤去された後の荒涼とした土地が今も残る。ピーク時は3万2000人いた仮設住宅居住者は、15年1月現在で約1万6000人。震災前に200社以上あった水産加工業関連事業所のうち、再開にこぎつけたのは6割ほどだ。2015年の国勢調査速報値によると、市人口はこの5年間で1万3590人(8.5%)も減少し、14万7236人となった。
ハルバーシュタット 情報交流館の訪問者に「復興はうまく進んでいますか」とよく聞かれるが、それに答えるのは難しい。石巻の市域は広く、一律に進んでいるわけではない。中心市街地は壊滅的だったといっても「街の形」はかろうじて残っていた。北東部の雄勝地区は根こそぎでゼロからのスタートと、それぞれの場所で課題も違う。
復興住宅の建設を目の当たりにすると「進んでいるな」と感じる。しかし、今でもプレハブの仮設住宅に住んでいる人は不安、イライラ感が高く、「復興事業の進み具合は遅すぎる」と、そういう気持ちも理解できる。仮設の人は、もちろん減ってはいる。復興住宅もどんどん出来てきている。ただ、コミュニティづくりは課題。仮設でできたコミュニティが復興住宅に入るとまたゼロからやり直し。高齢者や一人暮らしも多いし、たいへんな部分だ。
石巻市 復旧・復興のあゆみ
| 2011年3月11日 | 東日本大震災の地震・津波が発生市内各地で浸水、壊滅的な打撃 |
| 4月21日 | 小・中学校が再開(被災校の多くは他校に間借り) |
| 4月26日 | 応急仮設住宅の第1号が完成 |
| 5月19日 | JR石巻線が一部再開 |
| 8月1日 | 自衛隊による復興支援活動が終了 |
| 9月16日 | 日本製紙石巻工場で一部の操業再開 |
| 10月12日 | 市内全ての避難所を閉鎖 |
| 12月 | 市震災復興基本計画を策定 |
| 2012年3月17日 | 仙台-石巻間の鉄道がつながる |
| 3月 | 石巻工高がセンバツ高校野球全国大会に出場 |
| 7月20日 | 被災3県で初の被災市街地復興土地区画整備事業(新蛇田地区)が認可 |
| 11月27日 | 主要な観光施設「石ノ森萬画館」が再開 |
| 2013年4月1日 | 初の災害公営住宅入居開始 |
| 7月 | 海水浴場(網地白浜)が再開 |
| 8月 | 石巻魚市場の再建工事始まる |
| 2014年1月 | 災害廃棄物の焼却処理が終了 |
| 5月27日 | 集団移転先として初めて「釜谷崎団地」造成工事が完了し、住民に引き渡し |
| 2015年5月 | JR仙石東北ラインが開業 |
| 9月 | 石巻魚市場が全面運用開始 |
風化への不安:「石巻を忘れないで」
もちろん、街の将来に希望も持っている。
ハルバーシュタット 震災があって結果的に、かなり大々的に街の形が変わった。これを結果的にいい方向に持っていくしかない。過疎化していた市中心部が再開発されて人口が増え、活性化してくれることを願いたい。ボランティアで来た石巻が好きになって、この土地に住むようになった若者もいる。活力のある彼らが、今後の大きな力になると感じる。シャッター通りの空き店舗をNPOが借りて、復興・社会事業に取り組んでいる。その結果、街の中心部に若者の姿が「見える」ようになってきたと感じている。
「無我夢中」だったという5年間。だが被災地への社会の関心は次第に薄れ、この2年間は石巻を訪れる人も明らかに減ってきたという。近くの飲食店店主は「訪日外国人客がここ数年、驚くほど増えているのに、東北は取り残されている。観光客受け入れには何の問題もない。誤ったイメージをもたれているとしたら残念だ」と嘆く。リチャードさんは、こう話す。
ハルバーシュタット 情報交流館に来ていただいた人には必ず、「復興への課題は山積しており、震災は全然終わっていない。石巻を忘れないで、また様子を見に来てください」と話している。もちろん街中のがれきはなくなったし、ボランティアをお願いする分野も少なくなった。でも、まだまだ支援は必要です。観光でいいからここに来て、さまざまな消費をして地元経済を下支えしてほしい。そして、訪れた人々の防災意識を少しでも高めることができれば。それが私たちの役割でもあります。
取材・文:石井 雅仁(編集部)
バナー写真:リチャード・ハルバーシュタットさん=2016年2月5日、宮城県石巻市の復興まちづくり情報交流館で






