戦後70年を迎えて——湾生たちの今
台湾では1990年代後半から李登輝総統によって民主化が進められ、この頃から郷土の文化や歴史に対しての関心が高まった。日本統治時代についても冷静で客観的な判断の下、台湾に果たした貢献を積極的に評価する動きがある。これに連動して湾生に対する関心も高くなってきた。
福岡県在住で台南市出身の今林敏治氏は幼少期を過ごした台南の思い出をまとめ、『鳳凰木の花散りぬ』を刊行。貴重な証言の数々は台南の郷土史研究家たちから熱いまなざしを向けられている。また、多摩市在住で台北市出身の徳丸薩郎氏は日本統治時代の住宅地図を10年あまりの歳月をかけて作成した。湾生のネットワークを駆使し、情報を集めてはそれを手書きで地図に書き込んでいく。まさに気の遠くなるような作業だが、これは当時の台北市の姿を知る上で、第一級の史料と言えるものである。
また、当サイトでも登場した岡部茂氏(群馬県在住・台北市出身)は台北市建成小学校の同窓会「建成会」の運営に心血を注ぎ、同会は現在も旺盛な活動を続けている。こういった同窓会資料の中にも貴重な証言が潜んでいるのは言うまでもあるまい。
そのほか、故人ではあるが、天理大学名誉教授だった蜂矢宣朗氏は自らの思い出をまとめ、『湾生の記』を自費出版しており、台中出身の篠原正巳氏も『台中日本統治時代の記録』や『芝山巌事件の真相』を著し、いずれも台湾史研究で欠かせない存在となっている。台湾東部に関しても故・山口政治著『知られざる東台湾~湾生が綴るもう一つの台湾史』という500ページを超える大著がある。
いずれも、台湾への想いがにじみ出ており、湾生が台湾に抱く気持ちがいかなるものかが伝わってくる。
